君を想うほどに
「なんかさあ…最近俺避けられてねえ?」
「「誰に?」」
「名前に!」


そう言えばデントとコーンは顔を見合わせ首を傾げた。
名前は所謂幼なじみというやつで、昔は俺ら三つ子とよく一緒に遊んだりしてた。
ジムリーダーになった時も、いの一番に喜んでおめでとうと言ってくれたのも名前だし、店を開いてからは毎日のように遊びに来ていた。それが最近は店に来る回数も減ってきたし、なんかデントやコーンと話してる時は普通に笑顔なのに、俺と話す時はその笑顔もぎこちない。この前買い出しの時に偶然見かけて、話しかけようとしたら俺の顔見てあからさまに逃げたし…

やっぱり俺避けられてるんじゃないか…?


「そうかな?」
「そうだよ!最近滅多に来ねーし会ってもあいつ目逸らすしなんかよそよそしいし!ぜってー俺避けられてる」
「確かに、頻繁には来なくなりましたね、名前」
「ポッドが何かしたんじゃないの?」
「して……ないと思うけど」


何かって…あ、もしかしてガキん時幼稚園で名前の大好きなおやつのプリン取ったことか…?いやでもそんなの昔のことだし……………あーもう埒があかねー!ごちゃごちゃ考えるのも性に合わないしこうなったら本人の所に言って直接問いただしてやる!!


「ポッド!どこいくのさ!」
「名前のとこ!!」


店はどうするんですか!というコーンの言葉も無視して店を飛び出す。待ってろよ名前!








「はあ…」


私はソファーに座り、相棒のチラーミィを抱きしめテレビを見ていた。といってもその音声や映像は頭に入らない。私の頭はとある人物のことでいっぱいになっていた。
幼なじみの三つ子のひとり。その真っ赤な燃えるような髪型が特徴で、三つ子の中で1番子供でバカであほで何にでも熱くなって、でも意外にも優しくてかっこよくてあったかくて…ええい、まどろっこしい!ええそうですあのポッドです。よりにもよって1番ありえないと思っていたアイツを私は好きになってしまったのです!!

気持ちに気付いたのは、ほんの些細なことだった。気付いてからは、心臓が自分の物じゃないみたいにドキドキしっぱなしで、アイツの顔がまともに見られなくなって、目を合わせられなくなって、ついこの間までは普通に話してたのにその話し方も忘れちゃって、お店にもポッドがいると思うと、足が動かなくなっちゃって、いつしか行けなくなってしまった。

はあー…と再びため息をつく。チラーミィが離してほしいような目で私を見上げたので解放してあげると、部屋の窓際に走っていき、外を気にし始めた。どうしたんだろう?と思っていると、ドンドンドンと扉を叩く音。


「おい名前ー!いるんだろ!?」


あの声は…聞き間違えるはずがない、ポッドの声だ。
ああああ…なんでわざわざあっちから来るかな…!!どうしよう…そうだ、居留守だ!居留守を使おう!そのうちポッドも諦めて帰ってくれるはず…


「お!チラーミィ!」


………チラーミィ?
ハッ、と我に帰り周りを見回す。私のチラーミィがいない!あっ…窓が開いて…ここから出てったのか…!


「チラーミィ、名前中にいるか?」
「ミイ!」
「そっか!」


ミイ!じゃないよチラーミィ!!居留守使おうと思ってたのにばれちゃったじゃないか…!!


「おい名前!いるのは分かってるんだぞ!出てこい!」


これは出ずにはいられないみたいだ…はあー…とため息をつき、重い足を引きずる様に玄関に向かう。
ガチャリ、と扉を開けると、案の定そこにはポッドが仁王立ちしていた。


「な…何の用…」
「あのさ、お前俺のこと嫌いになったのか?」
「……は?」


いきなり何を言い出すんだこいつは。


「だってお前、俺のことだけ避けるし…店にも来なくなったし…俺嫌われたんじゃねーかって…」
「ち、違うよ!」
「じゃあなんでだよ」
「そ…それは…」


ポッドのことが好きだから。
なんて言えればどんなに楽になれることだろう。でも無理。無理無理無理。だって、今の幼なじみで友達という関係も好きだから壊したくないし、フラれたら、元の関係に戻れなくなったら、ポッドが私から離れてしまったら。と考えると、とてつもなく怖い。私にそんな勇気は、無い。


「……? お前顔赤いぞ?熱があるんじゃ…」


ポッドの手が肩に触れる。ドクン、と心臓が騒ぎ出す。頭に熱が集まって、私は気付いたらその手を払いのけていた。


「あ……」


ポッドが驚いて目を見開いている。どうしよう、私、


「……悪い、また来る」


え、とポッドの顔を見上げると、苦しそうな顔をしていた。ポッドは踵を返すと、私の前から去っていく。
私はへなへなとその場に座り込んでしまった。どうしよう、ポッドを傷つけてしまった。傷つけたくなんてなかったのに。心の底では、会いに来てくれたことが嬉しかった。心配されて嬉しかった。なのに、


「………私、何やってるんだろ、」


心配そうに寄ってきたチラーミィを、思わず抱きしめた。






「…………」



名前の家が見えなくなった所まで来て、俺は立ち止まり名前に払われた手を見つめる。
今まで、誰かと喧嘩をすることなんて、何回もあった。それこそ、ガキの頃から。でも、こんなに痛い喧嘩はあいつが初めてだ。体じゃない。心が、凄く痛い。

あいつに拒絶されたことが悲しい、苦しい。

くそ、なんなんだよ。



君を想うほどに
((この胸が苦しくなるのは、なぜ?))
君を待つ間、空を見上げた。