ホット・ウィンター

「オーバぁ、お腹すいた−」
「はいはい今から作るっての」


もう日が落ちかけている夕方。
こたつの中で寝そべりながら、俺のブースターと戯れている名前。
一方俺はキッチンで夕飯の支度を始めようとしていた。
名前も一応料理できるが、「オーバの料理が食べたい」なんて言われたら(しかも上目使いで)…作るしかないだろ。うん。俺ってつくづくこいつに甘いよなぁ……


「なんか食いたいものあるか−?」
「ん−…あったかいもの!」
「あったかいものか…じゃあ鍋にすっか!」
「やった!鍋!せっかくだからデンジも呼ぶ?」
「ん−そうだな、あいつも呼ぶか」


どうせろくな食生活してないだろうしな。デンジに電話をかけて、出かける支度をする。


「ちょっと鍋の材料買ってくる」
「あ!私も行く!」
「別に家で待っててもいいんだぞ?」
「……来てほしくないの?」
「そういう訳じゃねーよ。お前寒がりだろ?」
「……でも行く」
「なら厚着してけよ」


ブースターをボールに戻して家を出る。
外はもう暗くなっていた。店までの道のりを二人で歩く。
名前は結構厚着していたが、それでも寒そうだった。

店に着いて、今日は体が暖かくなるキムチ鍋にしようと材料を買う。あとポケモン達のためにフードも買った。

店を出ると、白い息が闇に溶ける。
今日は冷えるなと思い、来た道を戻る。
隣を歩く名前を見ると、手を寒そうに擦り合わせて、はー、と息をかけていた。


「お前手袋付けてこなかったのか?」
「あ…うん」
「霜焼けになるぞ?」
「つ、付けるの忘れちゃってさ。あーなんかオーバのアフロあったかそう。えい!」


ずぼっ、という音と共に、名前は俺のアフロに手を伸ばし入れた。


「ちょ、アフロをカイロ代わりにするな!」
「……うーん、なんか微妙だった」
「お前なあ…ほら、俺の手袋貸してやる」
「え…」
「ん?」


なぜか躊躇う名前。俺の手をじっと見て黙っている。
もしかして、


「……手、繋ぐか?」
「! うん!」


右手にしていた手袋を外して、名前の左手と繋ぐ。
名前の手は氷でも触ってるのかと思うくらい冷たかった。でも「オーバの手あったかい」とにこにこ満足げに言うので、俺の熱が名前に伝わるようにぎゅっと握り直した。


「…あのね」
「うん?」
「手袋してこなかった本当の理由はね、」
「うん」
「オーバと…こうして手を繋いで歩きたかったから」


はにかみながらそう言う彼女が最高に可愛くて…俺はたまらなくなって、思いっきり名前を抱きしめた。くるしい、と呻き声が腕の中から聞こえたので少し力を緩める。冷えた名前の体が温かくなるように抱え込むように抱きしめる。


「オーバ、アフロうざい、ちくちくする」
「しょうがねえだろ」
「オーバ、あったかい」
「そりゃあ俺は燃える男だからな」
「なにそれ」


くすくすと笑う名前が愛おしくなって、その唇にキスを落とす。唇もつめてーな、なんて思いながら顔を離すと、頬を赤くしてにへらと嬉しそうに笑うので、また再び抱きしめた。

いつの間にか、俺たちの頭上では雪が降り始め、名前の手は温かくなっていた。




(あ、デンジ。玄関で待ってたの?)
(……見せ付けてんじゃねーよアホアフロ)
(アホは余計だ!ていうか見てたのかよ!)

君を待つ間、空を見上げた。