純情少女


「………ねえデント」
「なんだい?」
「あつい」
「僕の心も君への思いで煎れたての紅茶のようにあついよ」


あほか、と呟けば後ろからくすくすと柔らかな笑い声。
休日、私の家に来たデントはさっきからこうして後ろから私を抱きしめてソファに座り、ずっとこの状況だ。
正直、私は気が気じゃなかった。どきどきしっぱなしだ。恋人といってもやっぱりこういうのは照れるもので。


「はなれて」
「久しぶりの休みなのに恋人と触れ合うことも許されないのかい?」


デントはいつもジムとお店の仕事で忙しく、なかなかこうして二人きりで過ごす時間が作れない。
だけど、だからこそ、私にはこういうことに免疫が無くて、嬉しいんだけど恥ずかしさの方が勝ってしまう。
デントが喋ったり笑うだけで吐息が首元や耳にかかり、くすぐったくてそれさえも私の羞恥心を煽る。


「は、はなれてよ」
「照れる名前も可愛いよ」
「うるさい…」
「せっかく久々に二人きりなんだから、君を少しでも感じてたい」


そう耳元で囁かれ、私の背中を電撃が走り抜ける。
心臓がうるさい。彼に聞こえてなければいいけれど。
何となく、デントはどんな顔をしているのか気になって、ちらりと後ろを振り向く。
とても、優しい顔をしていた。目を細めて、心から安堵しているような、そんな顔。
視線が合い、にこりと微笑まれる。それだけで私はカーッと頬が熱くなるのを感じた。
絡み合った視線は反らせなくて、デントの顔がゆっくり近付いてくる。免疫がない私でもデントが何をしようとしているのか分かった。鼓動が早くなって、頭に熱が集まって、どうしたら分からなくなって、


「……む、」


気付いたら無意識にデントの口を手で塞いでいた。


「き、きすはおあずけ!」


ぱちぱちと、見開いた目を瞬くと手厳しいなあ、と言って苦笑を浮かべるデント。少し罪悪感を覚えたけど、だってしょうがないじゃない。

どきどきしてどうにかなっちゃいそうなんだもん!!!

君を待つ間、空を見上げた。