そりゃないぜ!
俺、花村陽介と言う人間は、なぜか間が悪い。


14日の朝。昨夜はバイトが意外に早く終わって、帰ってから真っ先にベッドに潜りクマの安眠妨害もなくぐっすり眠ったおかげか、いつもより早く俺は目を覚ました。
二度寝するには微妙な時間で、クマはまだ寝ていたし起こさないように制服に着替え準備をし、家を出たんだ。
いつもの登校時間より子一時間早い、歩きなれた道を歩く。もともと田舎なためか、朝早く出るとすれ違う人もあまりいなかった。
あくびを噛み締めつつ、その時俺は今日の一大イベントについて考えていた。
2月14日バレンタインデーといえば、まあ男子は誰もがそわそわ浮き立つ日であって。もちろん俺も例外じゃない。
幸い八高はチョコ渡すの禁止ーとかそういう校則は無いし(モロキンが生きてたら禁止だったかもな)、クラスの女子や特捜隊の女子達から義理チョコくらいは貰えるんじゃね?という考えがあった。……天城たちのはぜひ市販であってほしい…うん……
そしてあわよくば誰かから本命チョコを貰えるかも……という淡い期待も持っていた。
まあ義理チョコも別にいいけどやっぱ本命が欲しいわけですよ男としては。とかなんとか一人考えつつ学校に着いた。運動部の朝練は始まってるみたいで、グラウンドの方から掛け声が聞こえてくる。
昇降口に近づくと、見知った人物を見つけた。苗字だ。あいつこんなに朝早かったっけ……と思いつつ校舎内に入ると、足音で俺に気づいた苗字がバッとこっちを向く。


「っ!!」
「あ…」


…もう一度言おう、俺、花村陽介はとにかく間が悪い。

なんてったって、人が下駄箱にチョコレートを忍ばせようとしている所に出くわしちまうんだから。
苗字も俺の登場は予想外だったんだろう、目を見開いて俺を凝視している。その手には今まさに靴箱に入れようとしていた、ラッピングされたチョコレート。
うわーあれ絶対本命だろ…!?


「は、はなむら…!!」
「いや!そのこれは別に!たまたま早起きして学校来たらたまたま居合わせただけで……って、ん?」


今気づいたけど、こいつがチョコレートを忍ばせようとしていた靴箱…俺のじゃね?うん、書いてある出席番号俺のだし……うん?
え、ということはこいつ、俺の靴箱にチョコ入れようとしてたわけ?本命を?
思わず俺も苗字も数秒見つめ合った後、お互い勢いよく目を逸らした。や、やべえ……頬が熱いし、今の俺顔赤いかも……


「…な、なあ、それ、」
「は、は、花村のばかああああ!!!」
「ぶっ!!!!」


投げられたチョコがバシーンと俺の顔面にクリティカルヒットして、その場にダウン…苗字は顔を真っ赤にして涙目で叫びながら走り去っていった。

……そ、そ、



そりゃないぜハニー!

(あいつが俺のことを好き…!?)
(せっかく誰にも合わないよう早起きしたのに…!ぐすっ)
君を待つ間、空を見上げた。