ここから始まる
マヨナカテレビにりせちーが映って、捜査(の名目でりせちーを生で見たいという不純な理由もあるけどな)で丸久豆腐店へ俺と相棒と完二、男三人で行った。
テレビとは全然雰囲気が違ったり、マヨナカテレビを見ていた事に驚いたりしたけど、今回は先回りして忠告出来たし、まあ……何よりあの人気アイドルと話が出来た!ってことに内心浮足立ちつつ店を出ると、メールの着信を告げるメロディが腰ポケットの携帯から流れてきた。
誰だ?と思いつつ携帯を取り出し開くと、
From:苗字
Sub:今から
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鮫川に来てくれないかな?
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里中達と同じく先約があって丸久に来れなかった苗字のメールだった。
苗字が俺に用事があるなんて珍しいな。と思いつつとりあえず相棒と完二と別れ、鮫川に向かった。
夕日に照らされた鮫川につくと、苗字は階段を降りた川辺の草むらに座り込んでいた。
何やってんだー?と声をかけると、振り向いた苗字の手には色とりどりの草花で作られた花輪が握られていた。
「あ、花村くん」
「メール見たぜ。ってか、なんか用事あったんじゃなかったのか?」
「ああ、うん。…花村くん今日誕生日でしょ?」
「え?お、おう。よく知ってるな」
「前自分で話してたよ?」
そ、そうだったっけ…?
いまいち覚えていないけど、人に誕生日を覚えていてもらってたのは嬉しい。
「それで、実は今日花村くんに内緒でみんなで誕生日プレゼントしよう!ってことになってるんだ。私が花村くんを呼び出して、その後みんなが来てサプライズ、って作戦」
「えっ……あの、既に内緒じゃなくなってますよ苗字さん」
「うん。瀬多くん達には申し訳なかったんだけど…」
" 先に私一人で誕生日お祝いしたかったから。 "
一瞬だけ花の臭いがして、1トーン小さく聞こえた呟きと、背伸びして目と鼻の先まで近付いてきた苗字の顔に思わずどきりと胸が高鳴る。一瞬、のはずなのに何故か時間が普通より長く流れたような気がした。
「え、あ」
「誕生日おめでとう、花村くん」
苗字が離れ、やっと何をしたかに気付き頭に思わず手をやる。触ったことのある柔らかい感触。はにかんで笑う苗字の笑顔は夕日に照らされて、すっごい綺麗だった。
思わず見とれて、ぼーっとしてしまったが、俺の横を通り過ぎる苗字に我に帰って、その背中を追いかけた。
「な、なあ、さっきのってどういう…」
「おーい、花村ー!名前ー!」
「あ、千枝ちゃん達来た。いこ、花村くん!」
「え、お、おう」
さっきの言葉の意味をちゃんと本人から聞くことになるのは、また別のお話。
始まった青春ロード
title/阿吽