赤い本
「俺、いつまで経っても妹に勝てないんだな…」
彼にそう言われ、その夜に別れようとだけ書かれたメールが送られてきた。
悲しいとは思ったけど、…ま、そうだよね…と納得してしまう。
だって本当に私は自分の彼氏より妹を優先してしまう。
歳の離れた妹は、母親の記憶がほとんどない。幼稚園に上がる前に病気で亡くなってしまったから。お父さんは家族を支える為一生懸命働いてくれているから、自然と家の事、妹の事は私がやっていた。最初は何で私が…って思った事もあったけどーー
『…ママ…ぅぅ……ママ…』
『…香菜…大丈夫だよ。お姉ちゃんがここにいるからね』
夜中、部屋の隅っこで小さくなって泣いている姿を見て、私が支えてあげなきゃ…私がお母さんになるんだって思った。
だから、彼氏とデートの日でも香菜が体調悪かったら別の日にしてもらったし、会いたいって言われても、ごめん…って言うのも一度や二度じゃなかった。
「そりゃ、振られても仕方ないよね」
「ん?お姉ちゃん何か言った?」
「!ううん、何も」
「?」
キョトンとした顔をする妹は…可愛い。あんなに小さかった香奈がもうすぐ高校を卒業する。今日は最後の三者懇談で彼女の高校に来ている。
「じゃあちょっと待っててね!早めに終わらせるから」
「ゆっくりでいいよ」
「ありがとっ」
三者面談も終わって、本を借りたいと言う彼女に付き合って図書室に来ていた。
自分が高校生の時は、学校の図書室なんて授業以外で来た事ない気がする。確か…
「…あ〜この辺のやつだっけ」
独り言を呟き、一冊の本を手に取る。赤い装丁で〇〇と書かれた本。
そうそう、三国志についてレポート書くっていう課題で――
本を少し開けようとした瞬間だった。白く強い光が本から溢れ出したのは。
「―えっ」
一瞬だった。目の前は一気に白く染まって、その光の強さに目を開けるのが困難で反射的に目を瞑った。
何?!一体何が!
目を瞑ってるだけじゃ光を遮れなくて腕を前に翳した。でも数秒でその光も治まってきて私はゆっくりと瞼を上げた。
一体、何だったの?…、香菜は?!
妹の無事を確認しようと翳した手を下し辺りに目をやった。
「――、え?……な、に」
私は高校の図書館にいたはず…なのに――
「こ、こ…は?」
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