束の間の焼肉と大食い

「ねぇ、焼肉食べたい。」

「なんでそうなった。」

という会話をしたのがほんの40分前のことだ。

「カルビ2人前に、塩タン5人前にーえーと、ホルモン10人前、あとはーご飯特盛お願いしまーす!」

「か、かしこまりました!」

目の前の女はそう、俺の彼女。
だが見ての通りのスレンダーな普通な女なのだが、さっきの注文の文を見てご察しの通りの大食らいの女なのだが…

「凌兵ー頼まなかったけどいいの?」

「あ?!お前が頼みすぎで萎えてんだよ!バカ女!」

「えー、そうかな?」

「17人前を平気で食う女は女じゃねーよ!モンスターって言うんだよ!ばーか!!」

「凌兵冷たいな、でも食べ放題だからいいじゃん、ね?ほらほら、凌兵の分も頼んだからさ」

なんてヘラヘラ笑いながら言う女。
でもそんな大食いでこんな女だが俺はそんなこいつを好きになったから仕方ない。

次々に運ばれる料理。
◎は次々に網の上に置いていく。

トングを使い両面を焼いていく。焼きあがった肉は自分と俺とに分けていく。
髪の毛が邪魔なのだが生憎ゴムを忘れてしまった。

「これ、使って。」

「いいのかよ、◎のお気に入りだろ?」

「うん、だけど、使っていいよ。私、ほら、髪の毛最近切ったから」

「お、おう」

「凌兵も髪の毛を切ったらいいのに」

「俺はこれでいいんだよ」

「この前、鬼道さんにいじめられたんでしょう?ラーメン屋で」

「うぐっ、なんで知ってだ!!」

「照れちゃってー可愛い凌兵」

「か、可愛いとか言うな!俺は男だぞ!!」

「はいはい、ほら焼けたよホルモン」

そう言ってトングで俺の目の前に焼けたホルモンを突きつけてきた。
俺は小皿をホルモンの下にそえると◎はポトっと落とした、◎に視線をやると笑顔で俺を見ていた。

「食べないの?」

「た、食べるよ!あつっ!!」

「ふふふ、焦るからだよー。凌兵は食いしん坊なんだから」

「わ、笑うな!!」

クスクス笑う◎。
俺は恥ずかしさのあまりに◎のゴムでゴム鉄砲をしておでこに命中させた。

するとイテッとい言っておでこを抑える。
跳ね返ってきたゴムで髪の毛を結びドヤ顔で◎を見る。

「なんだか腹たつなー顔が」

「そりゃどうも。そもそも俺はこんな顔だ」

「嫌な顔だなー」

「さっさと食わねーと俺が全部食べちまうぞ」

「あーん!タンマタンマ!!食べる!!」

それでも美味しそうに肉を頬張る◎。
俺はそれを見ながら肉のお守りをする、表にしたり裏にしたり、自分も少しずつ食べながら。

その間に次から次へと注文をしていく。
店員さんがどこか涙目になっているのはわかるが◎がそんじょそこらの大食いではなく世界に行けるほどの大食いだということ。

こいつなら大食い選手権に出れば絶対優勝はある。
大食いのテレビでもこいつ以上に食べたやつはいない。

ラーメン80杯は当たり前。
とんでもないがもちろん替え玉無料何個でもの店だ。じゃないとラーメンだけで破綻宣告者。
しかしその食べる量に見合わないくらい細身だ。

「なーにジロジロ見てんのよ。」

「あ?食うわりには細身だな」

「んーこれだけ食べても全部大で食べた分だけ出るのよねーふふん」

「マジかよ」

「あ、でもちゃんと栄養も十分だし、コレステロールも中性脂肪もそこまで高くないよ?」

「マジかよ」

「でも凌兵だけだよ、こんなに食べても嫌いにならない人は…」

◎は真面目な顔をしてそんなことを言い始めた。
たしかに初めはこんなバカみたいに食べる女は論外だと思っていたが、俺には◎しかいないのだと、好きになっちまったんだから仕方がないって。

だから俺はお前を選んだんだ。
だがそんなことは◎の前では言ってやらねー。
言っちまったらまた◎に笑われちまいそうだからな。

「ふっ、秘密だ」

「なにが?」

「俺がお前を選んだ理由」

「えー気になるー」

「それでも、な?と、いうよりさっさと食え、テーブルに置ねぇよ」

「あ、本当だ」

こんなに沢山ある肉ののった皿に◎が喜ぶのなら俺はそれでいい。

今だけは俺も…

束の間の焼肉と大食い彼女

□あとがき
どうもSIO.sの塩と申します。
焼肉デート企画、ご参加のお誘いありがとうございます!!
はじめての企画参加にどうしたらいいのかわからずこうなりました!、だけどririco様、ご誘いありがとうございました、本当に感謝しています!
見てくださっている方もこんなお話ですが喜んでくださればと思います。
ここまで読んでいただきありがとうございました。