『◎さん、焼肉行きましょう!焼肉!!』*
聖帝がイシドシュウジ…というか豪炎寺君から響木さんに変わってから間も無く、虎丸君からこんな連絡が来た。
立場上フィフスセクターにいた虎丸君は、しばらく私に会わないようにしてたみたいだけど…それもようやく終われるらしい。
寂しいと思ってたのは私の方だけかなぁなんて思っていたので、虎丸君の方から連絡をくれたのが嬉しくてすぐに返事をする。
勿論、答えはOK。
『やったー(*^▽^*)じゃあ、早速待ち合わせ場所なんですけど…―――』
虎丸君からも即座に返事が返ってきた。私の返信を待っててくれたみたい、そんな自惚れも今回に限っては許して欲しい。
会えない時間が長かったせいか、会いたいという気持ちがじわりと熱を持っていくのが分かった。
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「ん〜、ほいひーれす!」
「あはは!虎君、そんな一気に頬張らなくても」
こういう所はFFIの時から変わらず可愛らしいなぁと笑えば虎丸君は口の中の肉をゴクンと飲み込んで照れ臭そうに笑った。
「◎さんとご飯食べると美味しいから、つい…」
「ありがとう、じゃあ今日は虎君の為に上手に焼かないとね」
「わぁ、本当ですか?嬉しいです!最近はお世話役が多かったから、焼肉行ってもちょっと焦げ気味の肉ばっかりだったんですよね〜!」
「そうなんだ…」
「あっ!でも、◎さんも食べて下さいね?」
「うん、心配しなくても食べるよ」
フィフスセクターは歳上の人が多かったのかな?きっと豪炎寺君がある程度守ってくれてただろうけど…上下関係とか苦労したんだろうな。
今日はお疲れ様の意味を込めて、沢山甘やかしてあげよう。
焼いていたカルビがいい感じになっているのでひっくり返す。…じわっと浮き出た脂が表面を潤して、とっても美味しそう。
「…◎さ〜ん」
「ん?なぁに?」
「ずっと会えなかったから今日は近くにいたいなって…良いですよね!」
「ふふ、答え聞く前にもう動いてるよね」
ふと向かいに座っていた虎丸君がお皿を持って隣に移動してくる。さっきのカルビが焼けたので、乗せてあげるとまた嬉しそうに笑う。*
可愛らしさと愛しさで、頬がジリっと熱くなる。私まで焼かれている気分。
「◎さん、どうしたんですか?何か顔赤いですよ?変わります?」
「ううん、大丈夫。私に任せて!」
「でも、◎さんに任せきるとお世話ばっかりで全然食べないんですもん…」
「そんなことないよ?はい、塩タンも焼けましたよー」
「もー、はぐらかさないで下さい〜」
「ふふ、ごめんごめん。久々に可愛い虎君に会えて、私も浮かれてるのかも」
「可愛いって何ですか〜!」
「えっ、そのままの意味だよ?」
炭の熱の伝わった網がどんどん熱くなってきた。これは大変、焼け過ぎになる前に網から移動させないと…虎丸君に焦げたお肉あげたくないし。
「…―――◎さん!」*
「ん?ー…っ!?」
虎丸君に急にキスされて、舌を絡め取られる。会っていた頃にだってした事がないような、濃厚なソレに衝撃を受けた。
「っん…、…〜っ!」
しばらく虎丸君にされるがままになっていると、やっと満足したのかチュッというリップ音と共に唇を離してくれる。腰が、抜けるかと思った…。
「…と…、虎君…?どうしたの…?」
「だって、◎さんが意識してくれないから」
「え…意識って、意識してるよ?男の子として好きって事だよね?」
「足りないです〜!!男の『子』って言うのが正に!足りない証拠ですよ!!俺もう成人してるんですから、可愛いとか言われても嬉しくないです!」
「そ、それはすみませんでした…」
怒られてしまった…んだけど、もはや今それ所じゃない。
虎丸君のせいで熱くなった顔も体もどうしようかと俯くと、さっき取ろうとしたお肉が網の上でカリカリになっていた。
もしかして私も今この状態なのかな…。妙に共感してしまった。
「…焦げちゃった…」
「俺が食べます」
ひょいっとそれらを口に入れる虎丸君。苦いよ、と言えば『知ってますけど◎さんの焼いてくれた肉も、◎さんも、俺が責任もって引き取るって決めてるので!』と返ってくる。
その言葉でより一層、体と心から熱が溢れるのを感じたのだった…―――。