「ファフロツキー現象って知ってる?」
五条先生が言う。
「不可解な物体が空から降ってくる怪現象の事。魚や蛙などが突然大量に落ちてきた、といった事例が記録されている」
「正解。優秀だね」
「それも呪霊の仕業なんですか?」
「うん」
「世界に不思議なんてないんですねえ」
 瞬間、空から魚が降ってきた。私達の間に、アジとイワシがぼたぼたと落ちてくる。上を見あげても鳥や飛行機なんかは見えず、青い空から魚が降り注ぎ続けている。肩でイワシが跳ねて、生臭い匂いがした。イワシもアジも生きていた。
私は魚の雨に打たれ続けている。五条先生に魚は一匹もぶつからず、手前の空間で跳ねて落ちる。無下限で弾かれた魚がこちらに飛んできて顔にぶつかった。口に入った鱗を吐きだして生臭さに顔をしかめていると、けらけらと笑われた。五条先生の周りだけ空間が切り離されているように、魚の雨を弾き続けている。
この世界に不思議があるとすれば、それはこの人が存在していること、そのひとつだけだ。



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