二人は歩道橋の上に立っている。はるか下でヘッドライトの光の川が流れていく。そこは高台にあって、遠くまでが見渡せる。街灯が、ビルの窓の明かりが、夜の闇の中で煌めいている。
 彼女はオフィス街の明かりを背にして立つ。
「あの光の一つ一つのなかで人が働いたりご飯を食べたりテレビを観たりしてるんだよ。光のなかのどれかひとつにあなたがいるんだって思うと、私はこの街の全ての灯りを守るために闘うことができた」
 彼は夜景を背負って立つ彼女に向かい合っている。逆光で影が落ちる。
「そう思っているだけでよかったのに、どうしてこっちに帰ってきちゃったの、七海」



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