素直じゃないところも好き




「恭也、早く来い!」


「お、おい! ちょっと待って」



淳が呑気に座っていた恭也の手を引いて走り出した。


「いきなり、どうしたんだよ」


淳は恭也の問い掛けに構わず、手を繋いだまま先を歩いていく。


「おーい、淳?」


再度呼び掛けると不意にその足が止まった。





「手を・・・・繋ぎ、たかったんだ」


少し俯きながら、小さな声でそう言った。


「全く、この当主様は・・・・」


恭也は、呆れたように肩を大袈裟に竦めて見せた。



すると、キッと恭也の方を睨みながら淳は言った。


「なっ・・・・! そんなに可笑しいか!」


「そう言う訳じゃないよ」



「じゃあ、何でだ?」



「んー・・・・」



恭也は顎に手を当てて考える素振りをする。


でも考え無くとも、僕の中では答えは出ているようなものだ。




「・・・・可愛い、から」



「な、な・・・・!」


恭也の隣に居る淳の顔が、みるみるうちに赤みを増していく。

そして、わなわなと慌てだした。



淳はきっと表情が出やすいんだと僕は思う。


普段はポーカーフェイスを崩さないのに。


「可愛いなあ」


目尻を下げ笑う恭也は、顔が赤くなった淳の頭を撫でる。



「・・・・お前が悪い」





そうだ。


恭也はいつも狡い。


俺のペースに持っていこうとしても、すぐに崩されて呑み込まれてしまう。



「大好きだよ、淳」


「め、面と向かって言うな・・・・!」



そっぽを向きながら言った淳の顔は、朱が点して紅くなっている。


「あ、照れた?」



「そんな訳無いだろ・・・・!」


「はは。やっぱり、可愛いな淳は」



言うと同時に、恭也は頭を優しく撫でる。

しかしそれだけじゃ飽き足らずに、後ろを向いてしまっている無防備な淳の背を抱き締めた。


恭也と比べると多少、華奢な体つきだった。




「・・・・・・!」



「離さないから」





首筋に顔を近付けて、耳元で囁く。


「ぅ・・・・・・じゃあ、離すなよ」


きゅ、と淳は俺の腕を掴んだ。


「絶対、だからな」


「うん、分かってる」



じんわりと伝わる温かさが、二人を包み込んだ。


そしてそれは、二人が望めばどんな事があっても消えないような強い繋がりがあった。










君は無茶を言って僕を困らすけど・・・・



君は恥ずかしがって、僕を遠ざけてしまうけど・・・・






でも僕は、そんな君の





「ずっと傍に居ろよ」


「ああ、一緒に居るよ」




fin.

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Noir様如何でしたでしょうか?
初書き須田淳でしたが、ご期待に添えていれば幸いです(*´∇`)

それでは、引き続き当サイトをよろしくお願いします!




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