charm


私はこの村唯一の小さな病院である宮田医院に入院している。



そして、宮田医院の無愛想な医院長の宮田先生とお付き合いさせて貰っている。


でも、接していくにつれて色々な表情を見せてくれた。





色々な、ね。








「み、宮田先生・・・・何を、して・・・・」


「二人きりの時は、名前で呼べとあれ程言ったのにな」



「・・・・司朗。な、何をしてるのよ?」


「・・・・何をしているか? 七子、おかしな事を聞くもんだな」



見たままだろうと言うように、しれっとした態度で切り返された。


でもその顔には明らかに私を挑発して、あんな行為に運ぼうという魂胆や下心が見え隠れしている。


「じ、じゃあ何で太ももなんか触ってるんですか・・・・!」





──そう、私は病室のベッドに腰掛けてのんびりと景色を眺めていただけだったと言うのに・・・・。


彼は病室に入ってくると、私と同じ様に隣へ座りった。


ギシ、と二人の人間の重さを支えているベッドが軋んだ。



そこまでは良かったのに。


何故こうなってしまったんだろう。


「恋人なら仕方無いだろう?」



司朗の声で現実へと引き戻される。


「そんな事・・・・!」


七子に触れているその手がゆっくり、ゆっくりと滑り始めた。

そして七子のものに触れようとしている。



「いや・・・・・・」


顔を赤らめるもそれは意味も無く、更に司朗を煽る結果になった。


「本当は嫌じゃないくせに・・・・」


しかし太ももをまさぐっていた手が急に止まり、そのままスルリと顎へと伸びた。


細くて骨ばった手が肌に触れる。


それだけなのに、途端に心臓が鼓動を早く鳴らし始めた。


「・・・・・・っ!」


この高鳴る心音をすぐ隣に居る彼に聞かれていまいそうで、息を吸う事さえも儘ならなかった。



実際は聞かれそうで息を吸う事を忘れそうだったんでは無いと思う自分もいた。

私の見つめる先の彼の余りにも整った顔に見惚れてしまっていた、というのもあった。





それがいけなかった。


「ん・・・・・・!」


突然自分の目の前が暗くなったと思った矢先に、唇に温かく柔らかな感触。

驚いて目を見はる。


キスされたと分かるのには、時間は掛からなかった。




でも直ぐに唇と唇は離れてしまった。

そして、ふっと温もりが消える。


顔が離れ目の前が明るんだ。


「七子、キスは目を開けてするようになったのか?」


「なっ・・・・!」


ベッドから立ち上がった司朗は、皮肉そうだけど優しげな微笑みと共にそう言った。



その笑顔に、不意にもときめいてしまう自分がいた。


そして私の心は始終、五月蝿く主張を繰り返していた。



立ち上がっていた司朗は思い出したように口を開き、再び身体が近付いてきた。



「じゃあ、七子・・・・夜にでも続きするか」




追い打ちを掛けるように私の耳元へとそっと口を近付けて、低く穏やかな声音でそう囁いた。


その言葉を言い終えると、私の頭を軽く撫でた。



そして歩き出し、パタンとドアを閉め病室から立ち去った。


私は暫く呆然と司朗の出て行ったドアを眺めていた。


はっと我に返ると、先の司朗の言葉が頭を駆け巡った。


漸く理解したときには顔から火が出るような恥ずかしさに襲われ、掛布団に頭を埋めて一人悶えていた。





charm

(貴方はそうやって、私の心を捕らえて夢中にさせる。余裕の無い私は、貴方にどんどん呑まれていくんだ。)


fin.

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フロン様、如何でしょうか?
お気に召して頂けましたでしょうか?

宮田先生には、きっと人を惹き付ける何かがあると思うんです!←

そう思いながら書かせて頂きました。




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