夕焼けはまだ来ない

今、通称黒の組織に所属している私は、そこでのコードネームはお酒の名前を冠したベリーニというものを貰い、名乗っている。だが、私はこの組織に潜入しているNOCであり、この組織への潜入を命じたのは横濱をシマとする武装異能力集団といえるポートマフィアだ。諜報をメインとしていた私は、首領に下された指示通りこの組織に潜り込むことに成功した。

だが、しかし、私の本当の所属組織は内務省異能特務課であり、ポートマフィアに籍を置いてるのすらNOCとしてである。つまりは、三重間諜(トリプルフェイス)だ。

私と同時期、いや多少前後するかもしれないが、共にポートマフィアへ潜入していた坂口安吾という男が、更にトツ国…英国のミミックという異能集団に潜入すると決まった時は「優秀な人は大変だね!」と彼に言ったものだが、正直同じようなことが我が身にも起こるとは全くもって予想していなかった。安吾が、中から懐柔して情報を得るタイプ(多少の語弊はあるが)であるならば、私は電子機器を用いて情報を集める諜報員である。ポートマフィアへも、黒の組織へも、その腕を買われて所属することになったと言っても過言ではない。実際にはそれもあるが、異能特務課での私は異能力”蝶音”によるところが大きい。ポートマフィアでの私も”蝶音”を使って音を拾うことが出来ることは周知されている。だから、武闘には向いていないと認識されていることも。幹部含め首領は私が音を使って攻撃を加えることが可能なことも知っているが、この異能。実は音を操るなどというのは建て前で実際には空気を操るというのが正しい。異能を適切に扱うことが出来なかった頃の私は、この異能が音しか操れないと思っていたのだが、違かったのだ。だから、空気を操り相手を窒息させることも可能だ。

さて、ではこの異能力のことを黒の組織が知っているかと問われれば、答えは否である。そもそも、異能者がよく集まる魔都、横濱以外では異能力なんてものは都市伝説だと思われている節が強い。悪い組織に異能者が居れば、そんなことはないんじゃないかと思うかもしれないが、悪い異能者は異能力が集まる悪い組織に入るからそうはならないのだ。

だから、私が今いる組織の人間も異能なんてものは御伽噺だと思っているのだ。

「ベリーニ、今回のターゲットの情報は集めてくれたかしら?」
「勿論だよ、ベルモット。」

長い髪が美しい彼女にデータが入ったUSBを渡した。それを受け取った彼女の口元は艶やかなルージュを煌めかせながら弧を描く。私が情報集めた相手の未来は明るくないだろうが…

- 47 -


ALICE+