王家×天河
◯イズミル王子が第三王子設定のため、カイルが第四王子
遥か砂漠の彼方よりー、熱い風が吹きぬけた。そこはエジプト、ナイル川のお膝元である首都テーベをユーリたち一行は訪れていた。
「ユーリ、くれぐれも一人で何処かに行くなよ。」
そうカイルには言われたが、なにせエジプトへ来るのは初めてで。何もかもが真新しく目移りしている間に供をしていた、リュイとはぐれてしまった。
あっちゃー、やってしまった…またカイルに怒られる、と思うがその一方でこの街を探索する上では逆に良かったかもしれない。私がヒッタイト第四皇子カイル・ムシリの側室であることを知る者は居ないのだから。
今回エジプトへ来たのは、以前結んだ条約の追加事項に関しての確認ということになっているが、ヒッタイト側としてはエジプトの内情視察である。なんでもエジプトを治める歳若き王に、ナイルの女神の娘が輿入れをしたとか。
「ナイルから現れたから、ナイルの女神の娘なんて仰々しいと思うんだけど、私もイシュタルと言われてるから、人のことをあまり言えないのよね。」
ナイルの娘は汚れた水を真水に変えたり、コブラの毒からファラオを救ったりと奇跡を連続して起こしているらしい。それから珍しい金の髪を持つとか、色々な噂がヒッタイトを始めとしたエジプト周辺の、国々に流れてきていた。第三皇子であるイズミル皇子はちょうどナイルの娘が現れた頃にエジプトへ商人として潜入しており、一連の噂が事実であることを教えてくれた。諸外国の動きが気になるから、と自身の側近の一人であるルカをナイルの娘の近くに潜入させるぐらいなのだから、あのイズミル王子としては相当の入れ込みようだ。
「流石にオリエントの覇権を握ると言われることだけはあるね。人々に活気がある。」
王が好き勝手やっている国であれば、そこで暮らす民への皺寄せは避けられない。そして、街は活気を失くしていくのだ。
街を見渡して、さて何処へ向かおうかと考えていると、広場の噴水辺りから何やら叫び声が上がった。そして、その叫び声の周りに野次馬が出来ていた。
「何かあったの?」
野次馬の一人へそう声を掛ければ、周りにいた人も口々に何が起きたか教えてくれた。噴水越しに偉そうな男と倒れこむ女の子、そしてそれを庇う少女がいた。
「あの女の子が、この辺りではある意味有名な書記官様にぶつかっちまったんだよ。従者に殴られた挙句に権力振りかざして、投獄するとか言い出してな、さっきの悲鳴はその母親のもんだ。そこにあの嬢ちゃんが割って入ったんだ。」
少女の後ろでは、お付きの侍女が裾を引っ張っている。その様子にデジャブを感じて苦笑いをした。最も私付きであるシャラやハディはそこらの侍女と違って、腕が立つから加勢してくれるのではあるが…
そうこうしている間に、その書記官は少女にまで手を出そうとしていた。あの少女の様子ならば、何処か高官の娘である可能性があるだろうに、そこまで考えずに危害を加えようとするのは浅はかだ。
「おじさん、どいて」
「おい、君なにを…」
先ほどまで話していたおじさんを押し退け、勢いをつけたまま噴水を駆け上がり、殴ろうとしていた書記官の腕を掴み、その喉元に鉄剣の刃を突き付けた。
「いい歳した大人が寄ってたかってか弱い女の子達に手を出すなんて、恥を知るべきなんじゃない?」
「ぐっ…なんだ貴様は。」
「通り掛かりの旅人よ。ほら、早く退かないとそのまま手を滑らせちゃうかもよ?」
覚えとけよ、と捨て台詞を吐いた書記官は野次馬を掻き分けて逃げ出して行った。女の子は無事、少女の手によって救い出され、母の元に返されていた。次からは気をつけるのよ、と少女が諭していた。母親は少女とこちらにお辞儀をすると去っていった。
「さっきはあなたのおかげで助かったわ!ルカも居ないのに、考えなしに飛び込んでしまったから、どうしよう…と思ったんだけど…助けてくれてありがとう!」
「無事で良かった。でも、今後は護衛が居ない時にあまり無茶な行動はしないようにね。貴女、良いとこのお嬢さんみたいだし。」
どうして…と戸惑う彼女に庶民ならお付きの侍女が泣きながら「もう、どうしようかと!ルカ様も今日はいらっしゃらないし、……ハピ様にもしものことがあったら気が気じゃなくて」なんて言わないでしょう?と返せば、はずかしがってあ頬を赤くしていた。
つづきません\( 'ω')/
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