消えてしまった者たちへ
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     ホグワーツを卒業し、魔法省の実験的呪文委員会に努めて七年。すっかり仕事にも慣れてきたころに、ホグワーツの校長から手紙が届いた。ホグワーツに呼び出された私は休日のある日に卒業ぶりにそこを訪れた。

    「久しいのう、ラミア・セルウィン」
    「卒業以来ですからね。それで、何か御用でしょうか」

     ダンブルドア校長とは以前からどうも馬が合わない。この呼び出しも十分嫌な予感はしていたのだが。

    「ホグワーツで働いて欲しいのじゃ」
    「は?」

     これは予想外だ。いくつかのパターンを想像はしてたが、まさかこんな勧誘をされるだなんて。

    「冗談ですよね、ダンブルドア」
    「まさか」

     ダンブルドアの頼みなら、できれば断りたくはない。この魔法使いの影響力は並ではないからだ。だが自分で選んだ進路、今の職離れる気はさらさらない。どう断るのが正解か考えていると、目の前の御仁は恐ろしいことをいいのけた。

    「魔法省にはもう話しを通しておるよ」
    「はぁ?!」

     すでに外堀を埋められているとは、そんなことを許されるのはダンブルドアだけだろう。

    「あとは君の言葉のみじゃ。どうする?」

     ああ、もう。すべてはダンブルドアの手のひらの上なのだ。非常に納得いかないのだが、ダンブルドアがそういうのならそれが正しいのだろう。納得はしないが。

    「わかりました。引き受けます」
    「ありがとう。では来学期から頼む」
    「で、私は何の教科を担当すれば?」

     ちょうど退官する教授でもいただろうか。そう思いながら聞くと、ダンブルドアは楽しげに笑いながら言う。

    「ラミアには『現代呪文の応用と歴史』という教科を頼みたい」
    「なんですか、それ」

     OWL試験に新たに追加でもされたのだろうか。聞いたこともない教科だ。

    「生徒たちに社会に出るにあたっての呪文の扱いやその対処を教えてほしい。実験的呪文委員会にいた君に是非」
    「…了解しました」

     私が実験的呪文委員会にいたことすら、この人の計画の一つだったのではないかという気にすらなってしまう。まさかこんな形でホグワーツに戻ることになるとは。まあ、どうにかなるだろうと一つため息を吐く。ピアスが耳元で小さく鳴ったような気がした。



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