「ラニ、今大丈夫かな」
「ハイ。何か不具合など出ましたか?」
「いや、いつぞやのまるごしシンジ君、もいっかいDLして、外見ちょちょっとこちらの指定に沿ってカスタマイズする余裕はあるだろうか」
「その程度でしたら問題ありませんが……念のため一旦帰還して頂けますか」
 わかった、ありがとう、と伝え、ひとまず通信を切ると、未だ神店主の消えた方を向いたまま身体を震わせている青タイツ兄貴へ声を掛ける。
「泰山麻婆に挑む漢へ、ぜひ手向けたい品がある」
「いや、別に挑みたくて挑むワケじゃねぇけどな?」
 こちらへ向き直ったランサーの、苦虫を噛み潰したようなうへった顔。ケルトの大英雄をここまで凹ませる事ができるとか。いやもう本当にどんだけだ、泰山麻婆。
「地獄の麻婆の衝撃を緩和できるかもなソフトがあるんだ。ちょっと取ってくるから、あと少しこの場に留まっていて貰えないだろうか」
「まじでか。そんなイイモンがあんのか、スゲーな2030年!」
 思った以上に食い付きがいいランサー。ギルも別段異論は無さそうなので、急ぎ生徒会室まで戻る事にする。

「ぶほっ、何だこいつ!?」
「まるごし青タイツ君」
「フハハ、まるで写し身……いや、寧ろこやつ(青タイツ君)の方が男前だな!」
 ランサーの手の平の上に転送された、つぶらな瞳とかぱっと開いた口がちゃーむぽいんつのゆるキャラ。
 それは十四階での激闘を共に闘い抜いた――尤も、一食で戦闘不能に陥ったが――戦友(とも)。のランサーver.だ。
 生徒会室へ帰還したと思ったら優秀なスタッフ×2が、さくっとカスタマイズしてくれた。無論、半人前の自分が手伝う隙もなく。
「ふざけろ金ぴか。悪趣味なビーサン履きやがって……で? こいつがなんだって?」
「その青タイツ君の口の中に麻婆を流し込めば、ランサー自身が食べた事になるっていう」
「令呪縛りもクリアできんのか! マジスゲーなオイ!」
「とあるデストロイ料理にも耐えられた逸品だから、麻婆も一度にまとめて流し込めばイケると思う」
「……そっか。坊主も色々苦労してんだな……イキロ」
 ランサーが色々、の所でちらと、俺の横でニヤニヤしている黄金の(と言っても今は、旧校舎に戻ったついでにお召し替えあそばされて、わくわくなすいまー姿だが)サーヴァントを見やり、うんうん頷きながら肩をぽむぽむ叩いてくる。
 いやいや、地獄の麻婆10皿一気食いに比べれば、女難EXもあかい守銭奴(だがよいつんでれうっかり美人)の搾取も、いうこときかない変態サーヴァントも、どうという事はないから。寧ろ今そこにある危機はランサーの方だから。だから、その青タイツ君が出来るだけ持ち堪えられる事を祈っているよ。
「うし。気乗りはこれっぽっちもしねえが、いくか。じゃ、あんがとな!」
 と、ランサーは青タイツ君を小脇に抱え、晴れ晴れとした顔で去って行った。
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