ゼビル島に着くと同時に、トリックタワーを攻略した順番に森の中に入っていく。キルア氏は3次試験をクリアするのに本当に時間ギリギリだったみたいで、補佐の私は受験生が1人また1人と消えていくのを影からボーッと眺めていた。あ、あのハゲてる忍者。多分メンチ先輩が言ってたお気に入りだ。

ふと視線を感じてそちらを見るとキルア氏と目が合う。にも関わらず秒で逸らされた。
なんだお前、生意気だな。


【1日目】


本当について来てやがる。
島に上陸する前に目があったあの女。確か名前はサラだったか。一瞬で撒いてやろうと思って上陸と同時に走り抜けた。途中気配が消えたことから絶対に撒いたと思ったのに、なぜだかすぐに見つかってしまった。それから一定の距離をとってずっとついて来ている。
なんでだ‥。途中気配が消えたってことは絶対に離れたはずなのに。それに油断してそこで立ち止まってたわけでもなく、なんならそこからも猛ダッシュしたから追っては来れないはず。なのになんでだ。

俺が考え込んでいると、その気配に動きがあった。なんだと思って後ろを振り返る。
「先に言っておきますけど」
けれど、声がかかったのは振り返った俺の後ろ、つまりは俺の体の前だった。
一瞬で前に回られたのに、気づかなかったなんて。

「‥なんだよ」
「私を撒こうと思うのはやめてください。言ったでしょ?あくまで補佐だって。いないものとしてください。じゃないと、試験にならない」
「うっせーな」
「あなたが私を撒くことは不可能です。これがあるので」

そう言って女は目の前に携帯のような液晶画面をかざす。島全体を形どったその中にピコンピコンと効果音がつきそうな黒と赤の点滅が1つずつ。十中八九、俺とコイツだ。

「なるほどね」
「というわけで、私を撒くことに時間を割くんじゃなくてプレートをゲットすることに集中してください」

それでは、と女は素早くこの場を去った。去ったというか、恐らく近くにはいるんだろうけど、なぜか気配が一瞬でなくなった。
弱っちそうと思ってたけど、そこはやはりハンターなのだろうか。あの苦手な兄貴も家の中にいるときは兄貴と分かる気配があるのに、なぜか訓練や仕事についてくるときは全く気配が分からなくなる。しかも一瞬で。それと同じ感じがした。

はぁー。

もういいや。女の言うことに従うのは癪だけど、言うことは確かにと思わされた。俺の敵は女ではなく、受験生全員。あんなのに振り回されるなんてどうかしてる。早いとこ誰かに会って適当に狩りをしないとゆっくり休むこともできない。
その誰か、が199番だったらいいのになぁ。

**

ふー危ない危ない。上陸したと思ったらなんだあいつ。一瞬で見失った。足が速いなんてもんじゃない。紙面上のデータを見た時足早いだろうなと思ってはいたが、そんな考えの斜め上行く速さだった。なにあいつ。とてもじゃないけど人間じゃない。

やっとの思いでついて行ってたので、ピコンピコンと点滅する赤い点は先ほどまで画面に出るか出ないかギリギリの状態だった。ぶっちゃけ一瞬マジで見失ってエラーまで起こした。もうこうなりゃ使うしかないなとへっぽこな円を広げれるだけ広げてやっと見つけた。キルア氏は私に見つかるとは思ってなかったみたいで、近づいていったらギョッとされた。だよね。

キルア氏に忠告してその場を一旦後にする時、あまりに自分の気配の絶ち方が下手すぎるのを痛感して微力ながら絶をした。またも遠目で見た彼はギョッとしていた。そりゃそうだ。その辺の一般人に毛が生えた程度の気配の消し方だった奴が一瞬にしていないも同然になったんだから。ちなみにまたもへっぽこな私の絶は同じ念能力者からしたらこんなの絶でもなんでもないらしい。じゃぁ何だっていうのと思ってブハラさんに前聞いてみたら、「サラの絶ってなんていうか、ほらブタがそこに居たとしてさ、んー気配は消してるけどブーブー啼いててそこに居るの丸わかりって感じなんだよ。意味分かる?」と言われた。うっさいわブタ野郎め。70頭も巨大ブタ食べるなんてこいつはこいつで人間じゃない。

ピーーーーーー

物思いに耽っていると、突然キルア氏のGPS探査機がエラーを起こした。おや?不安に思って周囲を探ると、あぁと自分の額を手で覆う。やってしまった。またも完全に見失ってしまったのだ。
あんな人間じゃない奴、一瞬でも目を離した私がアホだった。

**

「あ!」
「あ?」

やっと見つけた‥!
あれから気づけば早2時間。お昼にこの島にたどり着いてなんやかんやして、キルア氏を完全に見失って、やっとの思いで見つけた今はもう陽も傾いて夜になろうとしている。なんてこった。

「99番見つかりました。お騒がせしました」
「待てサラ君!まだ話は終わってなーー」

プチッと電話を切る。リッポーさんまだ何か言ってたような気がするけど、まぁいいや。ほとんどたっぷり2時間お説教を聞きすぎてもはや彼の声など耳タコである。

ふう‥とため息を吐くと、偶然にも出くわしたキルア氏が「なぁ」と話しかけてきた。
な、なんでしょう。誰が私の冷や汗止めて!

「お前、もしかして」
「言うんじゃない」
「俺のこと見失ってた?」
「‥‥‥」

私が黙っているのを肯定と捉えたようで、彼は3秒くらい間を置いてからブッと吹き出し「ダッセー!!」と盛大に笑い出した。おいコラ殺すぞ。
それから彼の口からは私の悪口が出てくるわ出てくるわで、それはもう止まりそうもなかった。合間合間にダッセー!と言いながら「お前本当に試験管補佐かよ」やら「そんなんでハンター名乗るとか舐めてんの」やら「ついてくるんじゃなかったのかよ」やら、なんやらかんやら。腹が立つのを通り越して私は無になった。ならざるを得なかった。そうでもしないと心が修復不能なまでに砕け散る。事実見失ったことは本当のことだし、何も言えない言い返せない。あぁ‥。

目の前の少年はヒーヒー言って尚も笑い転げている。笑いすぎて死ぬんじゃないの?ってか失礼すぎない?人の失態をそんなあからさまにバカにして良いと思ってんの?
もういい加減にしろと思い、念を纏って軽く殺気を飛ばす。

「!」

すると、彼は急にマジな顔になって飛び退いた。彼はまるで敵に追い詰められた猫のように殺気立っている。一歩でも動けばあの変形した手で首を持ってかれるに違いない。ってか手ヤバすぎる。なにこいつどんなことしたらそんな手になんの?呪い?

「お前‥」
「軽く殺気飛ばしただけで何もしてないし、これからもしないので安心してください」

あぁまたも面倒なことになった。両手を上げて何もないことを示しながら自分の軽率な行動を呪った。彼はしばらく私を睨みつけて警戒していたが、本当に他意がないと判断してくれたのかとりあえずナイフみたいになった手だけは元に戻してくれた。ポンコツが調子乗ってすみませんでした。いやでも本当すごいわ。エリートすげぇ。ゾルディックの名前は知ってたけど、人間やめてるなんて知らなかった。子どもでこれなら当主は一体‥。いやもうみんな怪物か魔獣かなんかなんだろな。

「とにかく、これからは見失わないので!それじゃ!」

逃げるように去った。彼は何か言おうとしてたようだけど、私はあそこからすぐに消えたかった。あの殺気にこれ以上あてたれたら気狂いそう。今も冷や汗半端ない。オーラを纏うことでなんとか立っていられたけど、念も知らないままだったら良くて気絶、最悪死んでた。それくらい怖かった。念も知らないはずなのに、なんであんな殺気出せるの。めっちゃ怖い。纏めると、ポンコツにあんな殺気向けんなパッパラパーめ!!である。