18:from you.

「手が空いてる時でいいから、調味料の類の在庫をチェックしといてもらえるか」
「了解です」
「それと⋯!?」
「? 鳥養さんどうかしましたか」
「あ、ああ⋯いや⋯」

自販機の影に隠れつつ、こっそり店内の様子を伺うマネージャー(谷地仁花)を偶然視界に捉えた鳥養。その姿はいつぞやの武田一鉄を思わせる。

「神崎」
「はい?」
「俺が言うのもなんだが⋯マネージャーやってみる気はないか?つか、お前がバレー経験者だったことにまず驚いたが」
「⋯⋯すみません」
「ああスマン。別に責めてる訳じゃねーし、そもそもの前提として部活をやるかどうかは個人の自由だ」
「⋯⋯」
「まぁでも、コーチの立場から言わせてもらえばバレーの知識と経験があるマネージャーが加入してくれるのは俺としても正直有難い。谷地の入部は大きいしあいつも懸命にマネージャーとしての仕事をこなしてくれてはいるが、清水が抜けた後の負担を考えるともう一人マネが居るのと居ないのとでは大違いだからな」

以前『日向の練習を見てみたい』と彼女が言った時、少なからずバレーに興味があるのだろう位に鳥養は思ったが当人にそれ以上深く追及はせずにいた。ところが後々変人コンビが引き入れたがっているマネージャー候補がまさかの神崎という事が発覚し、以降それを何かのタイミングで聞きつけた仁花が彼女を説得するため暇を見つけては神崎のいる教室やバイト先に足を運んでいるのだ。

鳥養自身も初めは事の成り行きを黙って見守るつもりでいたのだが、仁花の熱心さとコーチとして烏野バレー部の将来を見据えた上で沈黙を破ってしまった事は不可抗力だといえなくもない。

「今はバイトを最優先したいっつーならそれはそれでいい。それこそお前自身が決めることだからな。ただ少しでも“やってみてもいい”って前向きな気持ちがあるなら考えてみてくれ。顧問の武田先生いわく『見学・仮入部はいつでも大歓迎』らしいから」
「――はい。ありがとうございます」
「っつーわけで、今日も来てるぞ」

鳥養が言いながら後ろを見遣ったので、それに促される形で入口の引き戸を開ければ。

「あっ⋯お、おおおはようございます!今日もバイトお疲れ様です神崎さん」

店内から突然姿を見せた神崎に仁花はビクリと体を跳ねさせ全身で焦りを表したものの、すぐさまシャキッと背筋を伸ばし深々とおじぎをして挨拶した。

「谷地さん」
「お仕事中にすみません!あの、バイトない日にちょこっとでもいいので是非見学に来てください。あわよくば仮入部もお願いシャス⋯!!」
「ありがとう。っていうか、こんなお休みの日まで足を運んで貰うと申し訳ないというか、なんというか⋯」
「いえ!部員の勧誘もマネージャーの仕事ですから。それに部活前に立ち寄らせてもらっただけなので申し訳ないとかそんなこと全然思わないで下さい!むしろいつも“ついで”のようになってしまって此方こそ申し訳ございません⋯!!」
「ちょっと谷地さん!土下座なんてしなくていいから、ね?」

相変わらずのやり取りに鳥養は後方で笑いを堪えるのに必死だ。

「ほら、二人ともその辺にしとけ。神崎は仕事再開、谷地もそろそろ体育館に向かった方がいいと思うぞ」
「あっ⋯す、スミマセン!」
「ですね。わざわざありがとう谷地さん」
「いえそんなっ。あの、でもほんとに影山君も日向も⋯もちろん私も、神崎さんのこと待ってるので」
「うん。その気持ちは十分伝わってるし、私もちゃんと考えてみるから」

そう言うと仁花は驚きに目を見開いた後、花が咲いたように笑った。
その屈託のない笑顔に思わず此方まで嬉しくなってしまう。

「部活頑張ってね。いってらっしゃい」
「ではまた!」

敬礼して去っていく谷地の背中に手を振って見送る。
一連の流れを見ていた鳥養の口元にも自然と笑みが浮かんでいた。

「さ〜て、俺も着替えてそろそろ行ってくっかな」
「鳥養さんもいってらっしゃい」
「おう!今日も店番、よろしく頼むぞ」
「はい!」


(完)
>>2nd season

2020/12/16
お題配布元:Cock Ro:bin