04:この恋を呼び醒まして

「影山って神崎さんのことが好きなのかな」

誰に問うた訳でもない。
――が、山口がポツリと漏らした一言に近くにいた一年ズが一斉に振り返った。そんなことなど全く予想だにしていなかった仁花は当然のように驚きの声を上げ、仁花とは対照的に月島は溜息交じりに呆れたような反応を示した。

「え⋯!そ、そそそそうなの山口くん?!」
「⋯⋯何を今頃」

ところが日向は一人だけ無言のまま妙に真面目な顔つきをしていて。いつもなら一番大きなリアクションを見せていそうなのに、と物珍しい彼の様子に皆の視線が集まった。

「⋯やっぱ山口もそう思うのか」
「やっぱりって、日向は前からそう感じてたの?」
「だって影山さ。ここんとこ神崎さん絡みで不機嫌になること多かったし」
「へぇ〜⋯王様と同じくバレーの事しか頭にない単細胞かと思ってたけど。君が気づいてたなんて意外」

月島の皮肉に今にも憤怒しそうな日向を山口と仁花は上手く宥める。

「休憩中に神崎さんに声掛けたりすると露骨に嫌な顔するデショ」
「はぁ?!月島、お前分かっててワザとやってたの?!」
「だって王様の反応が面白いから」
「ツッキー⋯」

いくら気が合わない影山相手とはいえ、何だかんだでツッキーも幼稚な一面があるよなぁと今度は山口が内心呆れていた。

「でも影山くんと神崎さんならお似合いって気がするなぁー」

少し離れた位置でお馴染みの“バックトス勝負”をやっている二人を見ながら、仁花がにこやかに言う。

「確かに。あんな風に影山と一対一で和気藹々と過ごせる女の子って中々居ないと思うし」
「中々居ないっていうか、彼女が特殊なだけだと思うけど」
「おれも神崎さんなら影山と上手くやっていけるんじゃないかと思う! 思う、けれども⋯!」
「「「???」」」
「付き合う、とか告白する、とか以前の問題で影山クン本人に“恋をしている”という自覚が今のところ全く無いデス」

日向の宣言に、一瞬にして辺りはシーンと静まり返る。

「⋯まさかとは思ってたけど、流石は王様」
「あ〜⋯まぁ⋯影山だしねー⋯。完全無自覚であの態度っていうのも凄いけど」
「影山くんはバレー一筋!って感じだもんねぇ。でも、影山くんの想いが本当なら応援してあげたいかも⋯なんて」
「一応日向は王様の相棒的な立ち位置でしょ。何とかしてあげれば?」
「けど当の本人が無自覚じゃフォローのしようがないって気もするけど⋯」
「そうソレ!そうなんだよ山口ぃ〜」
「ぁ⋯じゃあ影山くんじゃなくて、一先ず神崎さんに探りを入れてみるというのはどうでしょうか?!」

好きな人若しくはお付き合いしてる人がいるのか、さりげなく。

仁花の提案に、日向と山口はナイスアイデアと云わんばかりにすぐさまグッジョブのサインを出す。

「それイイ!さすがは谷地さんっ」
「女の子同士ならそういう話も何気なくできそうだね」
「⋯⋯まぁ、好きにすれば」

月島だけは相変わらずの素っ気なさだが、当人達の知らぬ所で影山&神崎の恋愛模様は勝手な盛り上がりを見せ始めていた。


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2022/01/05
お題配布元:fynch