トモダチカッコカリ

遠目でははっきりしなかったが⋯距離が近づくにつれて確信した。あれは隣席の彼女に間違いない、と。

そう気付いた瞬間に影山はその場からダッシュする。見知らぬ車に近づき助手席側の窓を覗き込むような形で身を傾けつつある彼女の腕をすばやく掴んだ。

「神崎ッッ」
「ひっ?!」

突然のことに小さく悲鳴を上げ、驚愕している事などお構いなしに大きく肩で息をしながら鬼のような形相で影山は怒鳴った。

「何やってんだこのボゲ!!」
「か⋯影山くん?いきなり何、」
「何じゃねーよ!お前どんだけ危機感⋯っ!?」

言いながら車に目を向けると車内には老夫婦の姿があり、状況を理解した途端影山は口を噤む。

「っていうか、丁度良かった影山くん。烏野総合病院ってこの道真っ直ぐでいいんだっけ?」
「え?⋯あー⋯行けなくはねぇけど、車なら県道通って行った方が良いと思う⋯マス」
「何でカタコト?―まぁいいや、ちょっと待って」

言ってさりげなく掴まれた腕に目配せすれば影山は慌ててパッと手を離す。その後、再度助手席の窓に近づいて老夫婦と一言二言交わせば車はゆっくり発進して去っていった。

「それにしてもびっくりしたよ。影山くん、怖い顔していきなり怒鳴るんだもん」
「⋯⋯」
「でも良かった。影山くんのおかげでちゃんと道案内できたし」
「⋯昨夜、道を尋ねるフリしながら車に連れ込んで誘拐するって事件をテレビで見て。そんでお前もそうなるかと思って焦ったんだよ⋯!悪ぃかボゲ!!」

照れと羞恥をごまかす為か、最後は逆ギレ気味に捲し立てる。

「そういうことね。心配してくれてありがとう」
「⋯⋯別に」

耳を僅かに赤く染めそっぽを向いてぶっきらぼうに返事をする。本人に言ったら激怒されるのは目に見えているので決して口には出さないけれど、思い込んだら一直線なところが本当に可愛いと思う。

「つーか、今日は風邪で欠席したんじゃねーのかよ」
「残念ながら真相はサボりです」
「は?」
「先生に『今日はどうしても気分が乗らないので行きません』とは言えないから体調不良ってことにしたの」

あっけらかんと言い放てば、呆れを含んだ視線が突き刺さる。

「学校もがむしゃらに通えばいいってもんでもないデショ」
「おまっ⋯!?どっかのメガネみたいな口調やめろッ」
「『どっかのメガネ』って誰のこと?」
「〜〜〜〜!!」

彼女は月島のことを知らない。
そう理解している影山は一から説明してやるのも癪に障り、せり上がってきたムカつきを飲み込んだ。

「そういえば今日はいつもより帰りが早くない?」
「んぬっ⋯テストが終わるまで勉強メインにしろって先輩達に言われた。赤点取ると合宿に参加できねぇから⋯」

眉間に皺を寄せ、それが不本意であることを隠そうともせず影山は不機嫌さを丸出しにする。

「まぁ色々大変だろうけど頑張ってね」
「チッ⋯他人事だと思いやがって。この不良女が」
「そのネタまだ引っ張る?」
「飲酒の次はサボり、不良確定じゃねぇか」
「だから飲酒は未遂⋯!」


拍手掲載期間:2020/06/01〜2020/06/28
お題配布元:Cock Ro:bin