ハートスクラッチ

月島は確かに春菜を誘った。
だがそれはあくまで“彼女限定”であり、まさかおまけがくっついて来るとは想定外だ。

「ねぇちょっと。どうして王様まで一緒なのさ」
「それが実はね⋯」

今から一時間ほど前に遡る。
月島から『君が好きそうなチーズケーキ見つけたんだけど』と連絡が入った。ショートケーキ目当てでケーキ店に訪れていた月島だったが、以前ベイクドチーズケーキが好きだと言っていた春菜の言動を思い出しラインで連絡を寄越したのだ。

ちなみに此処はカフェも併設されておりイートインも可能。話の流れでカフェで合流し、互いに目当てのケーキを食べようということになったのだが⋯。

「丁度家を出ようとしたら影山くんが自主練の誘いに来て、何処に行くんだ?って聞かれたから『これから月島くんとケーキ食べる約束してる』って言ったら俺も行っていいかって。それで⋯」
「ふーん。それで王様は図々しくついてきたってワケ?っていうかさぁ⋯王様は甘いもの好きなの?」
「特別好きでも嫌いでもない。つーか俺は図々しくねぇし、王様って呼ぶな」
「どう考えても図々しい王様そのものデショ」
「神崎の話聞いてたら俺もケーキ食いたくなった。だから来ただけだ」

絶対嘘だよね、ソレ。

月島はあからさまに牽制しながら影山に対し内心毒吐く。
影山は影山で全く悪びれた様子はなく、春菜の横でメニューに手を伸ばし始めている。

「ごめんね月島くん。連絡した方がいいとは思ったんだけど約束の時間迫ってたし、影山くんもケーキ食べたいって言うから折角なら一緒にと思って」

月島も春菜に悪気がなかったことは判っている。
判ってはいる⋯のだけれど。

彼女と二人だけの時間を過ごせることに淡く期待していた事もあり、心の靄はそう簡単に晴れてはくれない。けれどいつまでも愚痴愚痴イヤミばかり口にしていても仕方ないし、どうにかして気持ちを切り替えねばならない。

「はぁ⋯谷地さんも相当だけど、君も大概お人好しだよね」
「? 月島くん何か言った?」
「――別に。で、王様はどれにするか決めたの?」
「んぬん⋯」
「影山くん生クリームは平気?」
「食えるけどあんまガッツリじゃない方がいい」
「だったらシフォンケーキはどう?この紅茶のシフォン美味しそうじゃない?」
「神崎はコレが気になんのか」
「今日はチーズケーキ食べに来たけど、影山くんがシフォン食べるなら一口味見させて貰えると嬉しいかも」
「分かった。なら俺はそれでいい」
「前から思ってたけどさ、王様は神崎さんには甘いよねぇ?」
「はぁ?それはこっちのセリフだボゲ」

彼女が好きそうなケーキを見つけたからとわざわざ連絡を寄越す、なんて。
普段の月島からは全く想像できない。

「はいはい。二人とも分かり辛いだけで優しい人なのは知ってるから。早く注文して食べよう!」
「「⋯⋯」」

牽制し合っている男二人を余所に、当初の目的を達成しようとベルを鳴らし店員を呼ぶと早速注文し始める春菜。
数分後、注文した品が運ばれてくると何だかんだで仲良く(?)互いのケーキをシェアしながら三人は他愛のない話に花を咲かせた。


2020/12/16
お題配布元:誰花