01:否定から始まる存在

(あ…寝入ってた…)

仕事から帰って部屋着に着替えたところで何となくそのままベッドに倒れこんだらいつの間にか眠ってしまったようで。時刻はそろそろ20時になろうとしている。結果1時間近くも寝ていたことになり兎に角ご飯とお風呂、と寝室から出ようとした。

しかしドアを開けた瞬間私はフリーズし、すぐさまドアを閉じた。

何かの見間違いだろうか?
もしかしたらまだ寝惚けているのかもしれない。

――が、もしも先程見たものが現実であるとするならば見ず知らずの人間がうちのリビングのソファで横になっている。パッと見た印象ではあの体格から察するに恐らく男、だ。

意を決してもう一度ドアを開く。やはり先程見たものは夢でも幻でもない。見ず知らずの男がソファに横たわり眠っている。こうなったら相手が目覚める前に警察に通報しよう、とバッグに入れたままのスマホを取りに行こうとしたが絶妙なタイミングで男が身じろぎをした。どうか目を覚ましませんように…!と必死に祈るが神は聞き入れてくれなかった。男の瞼がゆっくりと開き、間接照明を眩しく思ったのか一瞬顔を顰める。すると早くも男は何らかの違和感を感じたのか、すばやく上体を起こした。すれば当然、私の存在にも気づく訳で。

次の瞬間、目にも止まらぬ早さで私の体は引き倒されて天井と男の顔が視界いっぱいに広がる。馬乗りになり、手首を押さえつけられ完全に動きを封じられてしまった。

「お前…何者だ…?此処は…何処だ、」

あなたこそ何者ですか、と言い返したいが男の威圧感が凄まじく何も言葉が出て来ない。ところがそれが余計に神経を逆撫でしてしまったのか、更に力を加えられてしまう。ギリギリと手首を締め付けられてこのままでは骨折してしまうと思った私は何とか声を絞り出す。

「ここ、は…私の自宅、で…」
「あァ?お前の…?」
「あ…あなたこそ何ですか…一体、」

不法侵入で警察に、と言いかけて男の風貌がふいに私の記憶を呼び起こした。長身で銀色の長髪、深緑の瞳に鋭い眼光…そう、まるで昨日友人と観に行った映画の登場人物のような。

“ジン”

無意識に呟いた名に男が瞠目するや否や、私の意識は完全に途切れた。

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お題配布元:Cock Ro:bin
2016/6/15