Melty Love
「たまには温泉浸かってのんびりしたいなぁ」
温泉宿を特集した情報番組を見ている最中、何気なく呟いた名前の願望はすぐに実現することとなる。先程から報告書を作成していたジンは彼女の呟きが耳に入ると同時にキーボードを打つ手を止めた。報告書の提出を終えれば現在抱えている仕事は一段落するため、ジンは2〜3日休暇を申請しようと考えていた。
仕事の都合で普段あまり構ってやれない恋人の希望であれば可能な限り叶えてやりたい。日頃からあまり我儘を口にしない名前の願いならば猶更だ。久方ぶりの休暇は彼女と温泉地で過ごすことが決定された。
なるべく人目につかぬよう、宿は客室がそれぞれ独立した作りになっている所を選んだ。受付がある本館には男女別の大浴場、そして離れには貸切湯がいくつかあるらしい。もちろん客室にも露天風呂が付いており部屋を出なくても温泉が楽しめる。プライベート感が重視されたこの施設はまるで別荘に訪れているようで、客室に足を踏み入れた瞬間から名前のテンションは鰻上りだ。
荷物を運び終えたスタッフが退室すると名前は早速部屋の中を散策する。1階は広々としたリビングに和室が一間、2階にはベッドルームがあり布団・ベッドのどちらでも休めるようになっていた。2階の洋室へ足を踏み入れた名前は当然のようにベッドの上へダイブ。真っ白なシーツとベッドの弾力が心地よくてその感触を堪能する。
「俺はガキを連れてきた覚えはねぇぜ⋯」
いつの間にかジンも2階へ上がってきていたらしい。突然響いた声にギョッとして名前は僅かに顔を赤くした。
「だ、だってフカフカなベッド見たら飛び込みたくなるでしょ」
「俺はならねぇな」
「まぁジンがベッドでキャッキャ言ってたらそれはそれで怖い⋯ってちょっと!」
「⋯なんだ」
「何で急に人の上に圧し掛かって来るのかな〜って、」
「お前が言うように飛び込んでやってんだ」
「私が言ったのはそういうことじゃなくてッ」
「もういい。少し黙ってろ⋯」
抵抗する名前の両手を押さえつけ、ジンは唇を塞ぐ。徐々に深くなっていく口付けに名前の身体から次第に力が抜けていった。大人しくなった名前に気を良くしたジンは首筋、耳へと唇を移動させていく。舌を差しこまれ、耳朶を甘噛みされると名前の身体がピクンと仰け反る。
「んっ、」
「ククッ⋯相変わらず耳が弱いな」
「ぁ⋯耳元で喋らないで⋯」
「こうされるのが好みなんだろう⋯?」
名前の抗議を無視し、いつもよりわざと数段低い声で囁く。そうされるとゾクゾクした得体のしれない感覚が背中や腰の辺りをざわつかせ、名前は甘い吐息を漏らし始める。彼女が恥ずかしげに瞳を伏せたところで、ジンはいよいよ衣服に手を掛けようとした。⋯が、絶妙なタイミングで備え付けられた電話が鳴り響き、一瞬にしてその場の空気が固まる。ジンは構わず続けようとしたが今度は完全に名前が止めにかかった。
「ジン⋯!早く電話出ないと、」
「放っておけ」
「フロントからだよきっと!いいからそこどいてっ」
自分より電話を優先する名前に少々残念な気持ちになりつつも、まだまだ時間はたっぷりある⋯と思い直してジンは素直に引き下がった。用件を聞き終えて受話器を置くと、名前は嬉しそうにジンの元へ駆け寄る。
「ここ、浴衣と帯好きなのを選べるんだって。本館に置いてあるらしいから行ってみない?」
「俺は部屋にあるもので構わん」
「えー!せっかく男性のもありますよって言ってたのに」
「興味ねぇから一人で行って来い」
「⋯はいはい。じゃあ行ってくるから待っててね」
ついでだから大浴場にも行ってくる!と言い残して名前は部屋を後にした。
***
「あ〜いいお湯だった」
鼻歌交じりに歩く名前は先ほど自分で選んだ浴衣に着替えていた。平日ということもあり、宿泊客も殆どいないらしく大浴場も貸切状態。家では味わえない大きなお風呂でのんびりと温泉を堪能できて幸せだった。そしてその手にはジンの分の浴衣もしっかりと。派手なのは好まないだろうと紺に近い黒色のシンプルな浴衣をチョイスした。
「そういえば、浴衣を着たジンを見るのって初めてかも」
彼の浴衣姿を想像して、思わず頬が緩んでしまう名前であった。
部屋に戻るとジンは寛いだ様子で本を読んでいる。
「ただいまー」
「入ってきたのか」
「うん。大浴場すっごい広くて気持ち良かったよ。丁度誰も居なくてゆっくり浸かれたし」
「そうか⋯良かったな」
「ちなみにこれはジンの分」
ズイ、と差し出された浴衣をジンは受け取る。
「せっかくだからジンのも選んできちゃった。嫌だったら無理しなくてもいいから」
「あぁ⋯悪かったな」
「私のはどうかな?浴衣って普段着ないから選ぶの難しくて」
桜の花をモチーフにした浴衣は名前によく似合っていた。髪も普段と違い頭上で高く纏められているため、項が露わになっていて色気も感じられる。
「⋯悪くはねぇ」
「ほんと?!良かったー。っていうか、ジンもお風呂入ってきたら?」
「夕食までまだ時間があるしな⋯そうするか」
そうしてジンも入浴を済ませ、暫くしてから部屋へ戻って来る。自分が選んだ浴衣を着てくれたことが名前はとても嬉しかった。イメージしていた通り、浴衣姿もとても様になっていてつい見惚れてしまう。彼女の視線を受けてジンは挑発的に口角を上げた。
「名前⋯誘ってるのか?」
「さ、誘ってなんかないってばっ」
赤面しながら慌てて視線を逸らす。素直すぎるその反応にジンはくつくつと喉を鳴らした。
「まぁ、お楽しみは夜に取っておくとするか」
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2014/5/14
温泉宿を特集した情報番組を見ている最中、何気なく呟いた名前の願望はすぐに実現することとなる。先程から報告書を作成していたジンは彼女の呟きが耳に入ると同時にキーボードを打つ手を止めた。報告書の提出を終えれば現在抱えている仕事は一段落するため、ジンは2〜3日休暇を申請しようと考えていた。
仕事の都合で普段あまり構ってやれない恋人の希望であれば可能な限り叶えてやりたい。日頃からあまり我儘を口にしない名前の願いならば猶更だ。久方ぶりの休暇は彼女と温泉地で過ごすことが決定された。
なるべく人目につかぬよう、宿は客室がそれぞれ独立した作りになっている所を選んだ。受付がある本館には男女別の大浴場、そして離れには貸切湯がいくつかあるらしい。もちろん客室にも露天風呂が付いており部屋を出なくても温泉が楽しめる。プライベート感が重視されたこの施設はまるで別荘に訪れているようで、客室に足を踏み入れた瞬間から名前のテンションは鰻上りだ。
荷物を運び終えたスタッフが退室すると名前は早速部屋の中を散策する。1階は広々としたリビングに和室が一間、2階にはベッドルームがあり布団・ベッドのどちらでも休めるようになっていた。2階の洋室へ足を踏み入れた名前は当然のようにベッドの上へダイブ。真っ白なシーツとベッドの弾力が心地よくてその感触を堪能する。
「俺はガキを連れてきた覚えはねぇぜ⋯」
いつの間にかジンも2階へ上がってきていたらしい。突然響いた声にギョッとして名前は僅かに顔を赤くした。
「だ、だってフカフカなベッド見たら飛び込みたくなるでしょ」
「俺はならねぇな」
「まぁジンがベッドでキャッキャ言ってたらそれはそれで怖い⋯ってちょっと!」
「⋯なんだ」
「何で急に人の上に圧し掛かって来るのかな〜って、」
「お前が言うように飛び込んでやってんだ」
「私が言ったのはそういうことじゃなくてッ」
「もういい。少し黙ってろ⋯」
抵抗する名前の両手を押さえつけ、ジンは唇を塞ぐ。徐々に深くなっていく口付けに名前の身体から次第に力が抜けていった。大人しくなった名前に気を良くしたジンは首筋、耳へと唇を移動させていく。舌を差しこまれ、耳朶を甘噛みされると名前の身体がピクンと仰け反る。
「んっ、」
「ククッ⋯相変わらず耳が弱いな」
「ぁ⋯耳元で喋らないで⋯」
「こうされるのが好みなんだろう⋯?」
名前の抗議を無視し、いつもよりわざと数段低い声で囁く。そうされるとゾクゾクした得体のしれない感覚が背中や腰の辺りをざわつかせ、名前は甘い吐息を漏らし始める。彼女が恥ずかしげに瞳を伏せたところで、ジンはいよいよ衣服に手を掛けようとした。⋯が、絶妙なタイミングで備え付けられた電話が鳴り響き、一瞬にしてその場の空気が固まる。ジンは構わず続けようとしたが今度は完全に名前が止めにかかった。
「ジン⋯!早く電話出ないと、」
「放っておけ」
「フロントからだよきっと!いいからそこどいてっ」
自分より電話を優先する名前に少々残念な気持ちになりつつも、まだまだ時間はたっぷりある⋯と思い直してジンは素直に引き下がった。用件を聞き終えて受話器を置くと、名前は嬉しそうにジンの元へ駆け寄る。
「ここ、浴衣と帯好きなのを選べるんだって。本館に置いてあるらしいから行ってみない?」
「俺は部屋にあるもので構わん」
「えー!せっかく男性のもありますよって言ってたのに」
「興味ねぇから一人で行って来い」
「⋯はいはい。じゃあ行ってくるから待っててね」
ついでだから大浴場にも行ってくる!と言い残して名前は部屋を後にした。
***
「あ〜いいお湯だった」
鼻歌交じりに歩く名前は先ほど自分で選んだ浴衣に着替えていた。平日ということもあり、宿泊客も殆どいないらしく大浴場も貸切状態。家では味わえない大きなお風呂でのんびりと温泉を堪能できて幸せだった。そしてその手にはジンの分の浴衣もしっかりと。派手なのは好まないだろうと紺に近い黒色のシンプルな浴衣をチョイスした。
「そういえば、浴衣を着たジンを見るのって初めてかも」
彼の浴衣姿を想像して、思わず頬が緩んでしまう名前であった。
部屋に戻るとジンは寛いだ様子で本を読んでいる。
「ただいまー」
「入ってきたのか」
「うん。大浴場すっごい広くて気持ち良かったよ。丁度誰も居なくてゆっくり浸かれたし」
「そうか⋯良かったな」
「ちなみにこれはジンの分」
ズイ、と差し出された浴衣をジンは受け取る。
「せっかくだからジンのも選んできちゃった。嫌だったら無理しなくてもいいから」
「あぁ⋯悪かったな」
「私のはどうかな?浴衣って普段着ないから選ぶの難しくて」
桜の花をモチーフにした浴衣は名前によく似合っていた。髪も普段と違い頭上で高く纏められているため、項が露わになっていて色気も感じられる。
「⋯悪くはねぇ」
「ほんと?!良かったー。っていうか、ジンもお風呂入ってきたら?」
「夕食までまだ時間があるしな⋯そうするか」
そうしてジンも入浴を済ませ、暫くしてから部屋へ戻って来る。自分が選んだ浴衣を着てくれたことが名前はとても嬉しかった。イメージしていた通り、浴衣姿もとても様になっていてつい見惚れてしまう。彼女の視線を受けてジンは挑発的に口角を上げた。
「名前⋯誘ってるのか?」
「さ、誘ってなんかないってばっ」
赤面しながら慌てて視線を逸らす。素直すぎるその反応にジンはくつくつと喉を鳴らした。
「まぁ、お楽しみは夜に取っておくとするか」
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2014/5/14