20:彼と楽園の林檎
※番外編夢主意識trip続き
「はぁ」
「どうした、溜息なんざ吐きやがって」
「なんだか越えてはいけない一線を越えてしまったような気がしちゃって」
「何を今更」
「浮気⋯じゃないんだけどなんか居た堪れない」
「ククッ⋯精々お前のよく知る“ジン”にバレねえようにすることだな⋯」
自分も彼女の世界の己に嫉妬したのだ。向こうの“ジン”だってそうに決まっている。彼女が元の世界に戻った後、もう一人の自分に根掘り葉掘り問いただされるのは目に見えていて。名前の性格からして、バレないようにするなんて到底無理な話で再び餌食になるのだろう。
何もかも手に取るように情景が浮かんできて、想像したら可笑しくて堪らない。一人だけ愉しげなジンに名前はジト目で睨んだ。
「⋯そんな余裕ぶっていられるのも今のうちだからね」
「あ?何がだ」
「もう一人の“私”だって、もしかしたら今頃向こうのジンにいーっぱい可愛がられてるかもしれないよ?」
「⋯⋯」
「なによー。そんな恐い顔したって、お互い様でしょ」
「チッ⋯」
「ジンが私に手を出さなきゃ向こうのジンだって“私”に手を出さなかったかもしれないけど、もう手遅れだよね」
勝ち誇ったようにドヤ顔で宣言する名前。流石のジンも正論過ぎて何も言い返せず、不機嫌そうにジロリと睨みを利かせるに留める。だがそれもほんの僅かな間で、次の瞬間にはいつものようにニヤリと強気に口角を上げていた。
「フン⋯その時はその時でまた戻ったら仕置きしてやるさ」
「それってすごく理不尽じゃない?」
「俺以外に啼かされたのなら、仕置きして当然だろうが」
「仮に“私”が啼かされてたとしてもぜーったいジンの方が強引に押し倒してると思う!」
「知るか」
「⋯⋯」
「だからお前もバレねェように気を付けろ、とさっき忠告してやっただろう」
「あのねぇ⋯そういう問題じゃ、」
ない、と力強く言い返そうとした刹那。
名前のお腹の虫が盛大に鳴いてジンは呆れた眼差しで彼女を見遣った。
「ったく、お前って女は⋯」
「し、仕方ないでしょ。まだ夕ご飯の途中だったんだもん」
「あぁ⋯そういえばそうだったか」
「ご飯、食べに戻る?」
「あれだけ盛大に腹の音を聞かされれば⋯っ! いきなり殴るな」
「ジンの乙女に対するデリカシーが欠け過ぎてるから悪いんでしょ!」
「ハッ!誰が乙女だ、誰が」
***
「――で、どうなんだ」
「もういいじゃない、こうして無事に戻って来られたんだし」
「やはりお前も“もう一人の俺”の処へ行っていたのか?」
「さぁ〜?どうだったかな〜?」
意識が別の時間軸?世界?にトリップしたのも突然だったけれど、戻って来られたのも突然。帰還直後は心底心配していた、といった素振りで親身に気遣ってくれていたのだがそれも束の間。今度は意識が飛んでいた間の事についての質問攻めが始まった。(向こうのジンが言った通りの展開⋯)
「“俺”のことだ。そのまま何もせずお前との時間を共有していた訳じゃねぇだろう」
「そんなこと言うってことは、ジンは向こうの“私”に何かしたのね?」
「⋯⋯」
「あー!やっぱり図星だ」
「うるせぇ⋯名前は名前に変わりないだろうが」
ジンの見事な開き直りっぷりに名前は閉口する。まぁ自分も向こうに行っている間には色々あったので彼を一方的に責めることも出来ないけれど。
「向こうの俺とお前は結婚しているそうだな」
「え、何で知って⋯」
「“名前”がそう話していた」
「あー⋯なるほど」
「組織も存続したままだと言っていた。何か危険な目に遭ったりはしなかったのか」
「えーと⋯特には⋯、」
目覚めた後『赤井さん』の名前を口にした途端貴方に襲われました、だなんて言える筈もなく⋯。挙句の果てには此方の世界ではお目にかかった事のない組織のメンバーとも顔なじみに。
名前の態度に鋭い視線を投げるジンであったが、当の本人はどうやら全てを話して聞かせるつもりはないらしい。
「と⋯とにかく、何事もなく毎日平穏に過ごしてましたっ」
「お前⋯今説明するのが面倒だと思っただろう」
「えへ、バレた?」
「後できっちり全部吐かせてやるから覚悟しておけよ⋯?」
「(うぅ⋯もう1人のジン⋯!助けに来て!!)」
※お題配布元:Cock Ro:bin
2015/9/25
「はぁ」
「どうした、溜息なんざ吐きやがって」
「なんだか越えてはいけない一線を越えてしまったような気がしちゃって」
「何を今更」
「浮気⋯じゃないんだけどなんか居た堪れない」
「ククッ⋯精々お前のよく知る“ジン”にバレねえようにすることだな⋯」
自分も彼女の世界の己に嫉妬したのだ。向こうの“ジン”だってそうに決まっている。彼女が元の世界に戻った後、もう一人の自分に根掘り葉掘り問いただされるのは目に見えていて。名前の性格からして、バレないようにするなんて到底無理な話で再び餌食になるのだろう。
何もかも手に取るように情景が浮かんできて、想像したら可笑しくて堪らない。一人だけ愉しげなジンに名前はジト目で睨んだ。
「⋯そんな余裕ぶっていられるのも今のうちだからね」
「あ?何がだ」
「もう一人の“私”だって、もしかしたら今頃向こうのジンにいーっぱい可愛がられてるかもしれないよ?」
「⋯⋯」
「なによー。そんな恐い顔したって、お互い様でしょ」
「チッ⋯」
「ジンが私に手を出さなきゃ向こうのジンだって“私”に手を出さなかったかもしれないけど、もう手遅れだよね」
勝ち誇ったようにドヤ顔で宣言する名前。流石のジンも正論過ぎて何も言い返せず、不機嫌そうにジロリと睨みを利かせるに留める。だがそれもほんの僅かな間で、次の瞬間にはいつものようにニヤリと強気に口角を上げていた。
「フン⋯その時はその時でまた戻ったら仕置きしてやるさ」
「それってすごく理不尽じゃない?」
「俺以外に啼かされたのなら、仕置きして当然だろうが」
「仮に“私”が啼かされてたとしてもぜーったいジンの方が強引に押し倒してると思う!」
「知るか」
「⋯⋯」
「だからお前もバレねェように気を付けろ、とさっき忠告してやっただろう」
「あのねぇ⋯そういう問題じゃ、」
ない、と力強く言い返そうとした刹那。
名前のお腹の虫が盛大に鳴いてジンは呆れた眼差しで彼女を見遣った。
「ったく、お前って女は⋯」
「し、仕方ないでしょ。まだ夕ご飯の途中だったんだもん」
「あぁ⋯そういえばそうだったか」
「ご飯、食べに戻る?」
「あれだけ盛大に腹の音を聞かされれば⋯っ! いきなり殴るな」
「ジンの乙女に対するデリカシーが欠け過ぎてるから悪いんでしょ!」
「ハッ!誰が乙女だ、誰が」
***
「――で、どうなんだ」
「もういいじゃない、こうして無事に戻って来られたんだし」
「やはりお前も“もう一人の俺”の処へ行っていたのか?」
「さぁ〜?どうだったかな〜?」
意識が別の時間軸?世界?にトリップしたのも突然だったけれど、戻って来られたのも突然。帰還直後は心底心配していた、といった素振りで親身に気遣ってくれていたのだがそれも束の間。今度は意識が飛んでいた間の事についての質問攻めが始まった。(向こうのジンが言った通りの展開⋯)
「“俺”のことだ。そのまま何もせずお前との時間を共有していた訳じゃねぇだろう」
「そんなこと言うってことは、ジンは向こうの“私”に何かしたのね?」
「⋯⋯」
「あー!やっぱり図星だ」
「うるせぇ⋯名前は名前に変わりないだろうが」
ジンの見事な開き直りっぷりに名前は閉口する。まぁ自分も向こうに行っている間には色々あったので彼を一方的に責めることも出来ないけれど。
「向こうの俺とお前は結婚しているそうだな」
「え、何で知って⋯」
「“名前”がそう話していた」
「あー⋯なるほど」
「組織も存続したままだと言っていた。何か危険な目に遭ったりはしなかったのか」
「えーと⋯特には⋯、」
目覚めた後『赤井さん』の名前を口にした途端貴方に襲われました、だなんて言える筈もなく⋯。挙句の果てには此方の世界ではお目にかかった事のない組織のメンバーとも顔なじみに。
名前の態度に鋭い視線を投げるジンであったが、当の本人はどうやら全てを話して聞かせるつもりはないらしい。
「と⋯とにかく、何事もなく毎日平穏に過ごしてましたっ」
「お前⋯今説明するのが面倒だと思っただろう」
「えへ、バレた?」
「後できっちり全部吐かせてやるから覚悟しておけよ⋯?」
「(うぅ⋯もう1人のジン⋯!助けに来て!!)」
※お題配布元:Cock Ro:bin
2015/9/25