運命の人ならここにいる

「ねぇ、ジンはパラレルワールドの存在って信じる?」
「さぁな⋯」
「え、てっきり完全否定されると思ったのに」
「物理学の世界で理論的な可能性・仮説が語られているようだからな」
「へぇ〜!ちゃんと根拠があるんだ?さすがは歩く辞典サマ」
「まぁ仮に存在するとしても俺達がそれを観測することは不可能。結局は否定も肯定もできない理論だ」
「けど、もしも本当にパラレルワールドが存在するとしたら面白いよね」
「面白い?」
「もしかしたらジンがいる組織が無くなっちゃっててジンも普通のお仕事しながら私と一緒に暮らしてたり、なんて事もあるわけでしょ」
「有り得ねぇ⋯」
「それ、組織に属してない自分が想像できないだけなんじゃないの」
「⋯⋯」
「っていうか、そうなると私が死んじゃってる世界もあるってことだよね」

私とジンが初めて出会ったあの時、そのままジンに撃たれちゃって⋯。

何気なく名前が呟けばジンは突然険しい顔つきになる。彼女は今となっては己の人生の中で最もかけがえのない、絶対に失いたくない唯一の存在。単なる例え話だとしてもそんな事は想像したくもない。

「フン⋯くだらねぇ」

そういうとジンは名前の腕を引いて自らの懐に抱き寄せる。

「例え俺達二人の世界が幾重に存在しようと、俺とお前は運命共同体だ」
「えーと⋯それってつまり、私はどこにいてもジンから絶対逃れられない運命ってこと?」
「まぁそういうことだ。お前がどれだけ泣いて喚こうが嫌がろうが死ぬまで俺の傍に置いてやるから安心しろ」
「折角ならもっと幸せに満ちた二人の世界を想像させてよ」
「なんだ、お前にとって俺と共に居ることは幸せなんじゃねえのか⋯?」

勝ち誇ったように不敵に笑うジン。

そんな風に返されてしまってはどうしようもない。急に押し黙ってしまった名前の耳元で低く囁いてジンは更に追い打ちを。

「おい。どうなんだ⋯?」

――そんなの、幸せに決まってるじゃない。


※お題配布元:fynch
2015/3/24