お前、完全に騙されてる
「ごめんなさい」
「⋯⋯」
「ねぇ、ジンってば」
「⋯⋯」
分かっている。ベルモットの変装術は伊達じゃない。同じ組織内の人間ですら、彼女の変装を見破れるのはごく僅かであろう。只の一般人である名前にそれを見破れというのは酷な話だ。
だがしかし、あのまま行けば危うく唇を奪われる所だったのだ。いくら同性同士で単にベルモットがあの状況を愉しんで(面白がって)いただけだとはいえ笑って流せる心境にはなれない。
「いくら奴の変装が優れているとはいえ⋯何も違和感を感じなかったのか」
「⋯まぁ、今思えば」
「⋯なんだ」
「ジンの行動が、ちょっと」
「⋯?」
「いつもの強引さが影を潜めていたというか⋯。色々私に合わせてくれてた感じ?」
「あ?」
「ぶっきらぼうなのは相変らずだったけど、服を見立ててくれてる最中も私の金銭感覚に見合った物をさりげなく選んでくれたりとか。支払いだっていつもは全部ジンがお財布開いちゃうけどそれも時と場合を選んでくれてたし」
「⋯⋯」
「違和感といえばそれくらい⋯かな」
「そんな事で、ころっと騙された挙句にあんなツラを浮かべてやがったのか」
「? あんな面??」
二人に割って入る少し前からジンはベルモットと名前の様子を窺っていた。もしかしたらベルモットはあえてそれに気付かぬ振りをしてデートを続けていたのかもしれないが、自身に変装したベルモットの隣に並ぶ名前はいつになく、終始幸せそうな表情を浮かべていて。あんな顔をさせているのが自分自身ではなく偽者の自分だと思ったら⋯無性に腹が立った。
「お前は、そういう“俺”が理想なのか」
「へ?」
「今日共に過ごした“俺”の方が居心地良かったんだろう」
「いや、別にそんな⋯」
「フン。正直に言え」
「うぅ⋯ジンの意地悪⋯」
「という事は、認めるんだな?」
「だって⋯!今日のジンと一緒に居て楽しいって思ったのは事実だし」
こんな時ですら馬鹿正直に答える名前。
そんな彼女が愛しくもあり、少しばかり憎らしくもある。
「だったら今後は俺に化けたあの女と心行くまで逢引きを愉しめ」
「やだ!私が好きなのはジンだけだもん⋯!」
「どうだかな⋯。まるで説得力を感じねぇが」
と言いつつ、滅多に好きだの惚れてるだの直接的な表現を口にしない彼女から明確な言葉を引き出せたジンは内心かなり満足していて。けれど、もう少しだけ⋯。
「本当に本当だよ」
「俺と同じ姿形をしてりゃ誰でもいいんじゃねぇのか」
「だから、ごめんなさいってもう何度も謝ってるのに⋯!」
「ほぅ⋯開き直る気か。相手が偽者だと気付かず口付けまで許しそうになっていたお前が、なァ⋯?」
「⋯⋯どうすれば、許してくれる?」
ここまで来れば、しめたもの。
ジンは厭らしく口角を上げると上目使いで様子を窺っている名前の腕を引いて抱き寄せた。当然ながら、この後名前は声が枯れ果てるまで彼に啼かされる羽目になった。
(ちょろいもんだな)
※お題配布元:fynch
2017/2/26
「⋯⋯」
「ねぇ、ジンってば」
「⋯⋯」
分かっている。ベルモットの変装術は伊達じゃない。同じ組織内の人間ですら、彼女の変装を見破れるのはごく僅かであろう。只の一般人である名前にそれを見破れというのは酷な話だ。
だがしかし、あのまま行けば危うく唇を奪われる所だったのだ。いくら同性同士で単にベルモットがあの状況を愉しんで(面白がって)いただけだとはいえ笑って流せる心境にはなれない。
「いくら奴の変装が優れているとはいえ⋯何も違和感を感じなかったのか」
「⋯まぁ、今思えば」
「⋯なんだ」
「ジンの行動が、ちょっと」
「⋯?」
「いつもの強引さが影を潜めていたというか⋯。色々私に合わせてくれてた感じ?」
「あ?」
「ぶっきらぼうなのは相変らずだったけど、服を見立ててくれてる最中も私の金銭感覚に見合った物をさりげなく選んでくれたりとか。支払いだっていつもは全部ジンがお財布開いちゃうけどそれも時と場合を選んでくれてたし」
「⋯⋯」
「違和感といえばそれくらい⋯かな」
「そんな事で、ころっと騙された挙句にあんなツラを浮かべてやがったのか」
「? あんな面??」
二人に割って入る少し前からジンはベルモットと名前の様子を窺っていた。もしかしたらベルモットはあえてそれに気付かぬ振りをしてデートを続けていたのかもしれないが、自身に変装したベルモットの隣に並ぶ名前はいつになく、終始幸せそうな表情を浮かべていて。あんな顔をさせているのが自分自身ではなく偽者の自分だと思ったら⋯無性に腹が立った。
「お前は、そういう“俺”が理想なのか」
「へ?」
「今日共に過ごした“俺”の方が居心地良かったんだろう」
「いや、別にそんな⋯」
「フン。正直に言え」
「うぅ⋯ジンの意地悪⋯」
「という事は、認めるんだな?」
「だって⋯!今日のジンと一緒に居て楽しいって思ったのは事実だし」
こんな時ですら馬鹿正直に答える名前。
そんな彼女が愛しくもあり、少しばかり憎らしくもある。
「だったら今後は俺に化けたあの女と心行くまで逢引きを愉しめ」
「やだ!私が好きなのはジンだけだもん⋯!」
「どうだかな⋯。まるで説得力を感じねぇが」
と言いつつ、滅多に好きだの惚れてるだの直接的な表現を口にしない彼女から明確な言葉を引き出せたジンは内心かなり満足していて。けれど、もう少しだけ⋯。
「本当に本当だよ」
「俺と同じ姿形をしてりゃ誰でもいいんじゃねぇのか」
「だから、ごめんなさいってもう何度も謝ってるのに⋯!」
「ほぅ⋯開き直る気か。相手が偽者だと気付かず口付けまで許しそうになっていたお前が、なァ⋯?」
「⋯⋯どうすれば、許してくれる?」
ここまで来れば、しめたもの。
ジンは厭らしく口角を上げると上目使いで様子を窺っている名前の腕を引いて抱き寄せた。当然ながら、この後名前は声が枯れ果てるまで彼に啼かされる羽目になった。
(ちょろいもんだな)
※お題配布元:fynch
2017/2/26