灰色の猫が鳴く

会議終了後に次々と席を立っていく捜査員達。しかしジンがその場から動く気配はなく微動だにしない。

「ジン」

見兼ねた赤井が声を掛けるが無反応。再度、先程よりもやや声量を上げて呼びかけるとようやく反応を見せた。

「⋯なんだ」
「会議は終了したぞ」
「⋯⋯」
「今回の事件について何か気になる事でもあるのか」
「⋯別に」
「ここだけの話だが⋯彼女も心配していた。名前にはくれぐれもジンには内密に、と念を押されていたんだが先日監査の時に尋ねられたよ。『近頃ジンの様子が少しおかしい。FBIで何かあったのか?』と」

それを聞き、ジンは初めて赤井の顔を直視した。

「彼女はお前に関する事となると敏感で鋭い」
「⋯⋯」
「やはり気がかりなのか」
「あ?」
「お前達組織のボスの身柄を拘束した件さ」
「⋯⋯」
「もしお前がどうしても、と言うならほんの僅かでも謁見できるよう俺が⋯」
「ククッ⋯FBIの狗に成り下がった俺の姿を『あの方』に曝して来い、と?」
「誤解しないでくれ。そんなつもりはない」
「なァ赤井⋯お前のいう“正義”とは何だ?」

唐突な問いに赤井は面食らう。

「お前達は組織を“悪”だと云うが⋯俺にとっちゃFBIも大差は無い」
「⋯⋯」
「公安だろうがCIAだろうが、お前等“正義を掲げる組織”も所詮この世界のクズ共の手足に過ぎねぇって事だ⋯」
「⋯何が言いたい」
「『あの方』が何の為に組織を動かしていたと思う?無差別に人殺しをしていた集団ではないことくらい、お前ならすでに気づいているだろう」
「⋯⋯」
「赤井。お前は歴代のアメリカ大統領が暗殺された理由を知っているか」
「知っているも何も、結論から云えばそれらは全て第三者による推論に過ぎん」
「ああそうだ⋯。だがな、世界の構図を解すればおのずと見えてくるものもある」
「⋯⋯」
「世の中の大半が陰謀論だ何だと鼻で笑っているような事が真を突いている場合もあり得るということだ⋯」
「―ジン。お前はこれまでの人生で何を知り、何を見て生きて来た?」

ジンの瞳を見据え赤井は真剣な眼差しで問うた。だが答えはなく、ジンは僅かに口角を上げると視線を逸らして腰を上げた。

「フン⋯どうやらお喋りが過ぎたようだ⋯」

ところで、明日は装備A1で待機だったな?
話題を一変させ、これ以上この話を続ける気はないのだとジンは暗に主張する。

「⋯ああ。そうだ」

一瞬の沈黙の後、赤井はジンの意を汲み取り追及を諦めると先程の問いに対する返答を。すれば早々にジンは赤井に背を向ける。

赤井はその背中を、ただ黙って見つめるしかなかった。


※お題配布元:Cock Ro:bin
2017/4/1