確かなことは、彼が私を見ていないという現実

「随分と酷い顔ね⋯」
「⋯ベル姉」
「ジンなら今夜もいつ戻ってくるか判らないわよ」
「――うん」
「昨夜も遅くまで待っていたでしょう」
「見てたの?」
「偶々、ね」

私達以外には誰もいないこの場所が静寂に包まれる。
なんだか無性に、泣きたくなった。

「本当は⋯分かってたんだ。ジンが唯一執着しているのは、シェリーなんだって」
「⋯⋯」
「バカ、だよね。それでもいいって全部納得して傍に居たはずなのに⋯」

もしもわたしがシェリーと同じように組織から逃げ出したら、ジンは地の果てまで追いかけて来てくれるのだろうか?そう思ったら、確かめてみたくなった。わたしが彼にとってどれ程の価値がある存在なのか。確かめる術はもうそれしか、無い。

「莫迦な真似はお止めなさい」
「わたしまだ何もいってない」
「恋に溺れる、なんてみっともないわ」
「ベル姉は強いね。それに⋯優しい」
「次同じセリフを言ったら頭に風穴を開けるわよ」

彼女だって本当は、ジンの“特別”になりたかったはずなのに。こうして恋敵でもある妹分の世話を焼いているのだから、とんだお人好し。そんな彼女の想いを無碍にしないためにも、わたしはもっと強く、気丈にジンの隣りに立っていなければならなかったのに。

本当にごめんね、ベル姉。

「もしわたしが賭けに負けたら⋯その時はベル姉がわたしを殺して」
「ティフィン、」
「お願い」

真っ直ぐに彼女の瞳を見据えて言った。

「顔も名前も知らない末端の組織員に殺されるなんて真っ平ご免だもの」

それを聞いたベルモットは僅かな沈黙の後、小さく溜息を吐いた。

「⋯分かったわよ。その代わり、賭けに勝ったらアタシの前で二度と泣き言は吐かないで頂戴」
「賭けに勝ったところでどっちしろ、わたしはもう生きてないよ」
「さぁ⋯?それはどうかしらね⋯」

明日にはもうこの世界にいないわたしに、彼女は大胆不敵に笑って見せた。


お題配布元:確かに恋だった
加除修正:2023/06/09