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全編現パロ(主に神居商事パロ)/順不同/随時修正
*0122:尾形/誕生日
俺のまわりは、何故かお節介なやつが多い。
「まだ誘ってないの?あの子だって暇じゃないんじゃない?」と、ほぼ毎日のように絡んでくる宇佐美。昨日など「誰かに掻っ攫われちゃうよ」「は、誰にだよ」「僕、とか?」とのたまったので、一発殴っておいた。宇佐美だけではない。あのバルチョーナク鯉登は、「何、誕生日に彼女と食事をしたい?! ちょっと待っていろ」とスマホを取り出し、ものの数秒で高級フレンチを予約した。言っておくが、一言どころか一文字さえそんなことは口にしていない。
月島さんは「仕事をよこせ」と積み上がった書類を持ってデスクに帰った。宇佐美曰く、残業しなくてすむように、だそうだ。
菊田さんに至っては、あいつに聞こえる声でわざと「お、尾形!今月誕生日なのか!いやあ めでたい!いつだって?え、22日!1月22日だな!そうかそうか!」と大声をフロアに響き渡らせた。恐ろしいことに俺は一言も発していない。というのは確か先週末のことだったか。
社外でいうとサバゲー仲間のヴァシリと義弟の勇作さんからもよくわからんメッセージが入る。どいつもこいつも暇なのか?
そんなやつらのせいで、俺の誕生日はあいつに知られているはずだった。
「え?今日がなんの日かって?」
なぜこの女は、きょとんという擬音しか当てはまらないような馬鹿面をしているのか。じっと顔を見つめ、無言の圧をかける。知っているんだろう、そんな純真無垢な顔をして。騙されんぞ。
「え、ていうか、そもそも今日って何月何日?2月…あれ、まだ1月?」
…………もしかすると本物の馬鹿だったのかもしれん。これなら菊田さんの大声すら耳に入らなかったと言われても頷ける。よもや聞こえていたが忘れたとは言わんだろうな。
「1月22日だ阿呆め」
痺れを切らして告げると、瞳孔が開くのが見えた。
お誕生日、おめでとう!
*1223:鯉登/誕生日
その日、鯉登の心はとても騒がしかった。
実際には言動も大いに忙しなかったのだが、誰も言及しなかったこともあり、当人は知らない。
華奢な背中を見つけて名を呼んだ。声が少々上擦っているのを自覚して、ひとつ咳払いをする。廊下の窓からは眩しいほどの西陽が差し込んでいる。振り向いた彼女が微笑んで、それだけで気持ちが弾んだ。
「き、今日、時間はあるだろうか」
思い切って口にすると、彼女は考えるように視線を流した。そして目を合わせてこう言った。
「特に急ぎの仕事はなかったと思います。なにかお手伝いすることがありますか?」
唖然とした。完璧に言葉を間違えた。ずうんと重い空気を纏う己に、彼女が不思議そうに数度瞬きをする。
「…………ファイリングを」
「わかりました、後でデスクに行きますね」
助かる、と呟いて頭を悩ませる。恥を忍んで再度誘いを試みてもよいものだろうか。もっとスマートに誘うはずだったものをぉぉ!と歯噛みしていると、彼女が恐る恐る言葉を紡ぐ。
「……あの…今夜なにか予定って――」
「キェ?! ない!」
反射的に叫んでいた。彼女は鳩が豆鉄砲を食ったような顔をしたあと、再度躊躇いがちに口を開く。
「もし、よかったら……その、一緒にご飯でも――」
「い、行く!」
またしても反射的に叫んだ返答に、彼女が嬉しそうに笑った。
*1126:菊田/誕生日
――ああ疲れた。
首と肩を回しながら社食を見渡す。忙しさで長らく訪れていなかったが、昼時という時間も相まって混み合っている。見知った顔を見つけ空いてるかとジェスチャーを向ければ、彼女は大きく頷いた。適当に日替わり定食を選んでテーブルへつく。
「菊田さんお疲れさまです」
「お疲れさん」
向かいで笑う彼女の前には、ほぼ空になった皿。休憩はもう終わるのだろうか。年甲斐もなく残念に思う自分に苦笑する。ふと、今しがた部下からもらって腕にぶら下げていた巾着袋が目についた。あー……と声を出すと、グラスの水をコクンと飲んだ彼女の視線が上がる。
「お前さん、大福は好きか?」
「大福?」
「誕生日プレゼントだともらったんだが、1人で食い切れる気がしなくてな」
言って、しまったこれはもしやハラスメントか?そう慌てていると、彼女は黒目がちな瞳を丸くさせる。
「菊田さん、今日お誕生日なんですか?」
「あ?ああ、まあ」
「おめでとうございます!わたしなにも用意してないのに、その上大福もらうつもりでいますけどいいですか?」
その言い分が可笑しくていいよと笑う。
「ご飯終わるの待ってますから、コーヒーくらい奢らせてくださいね」
願ってもない提案に目尻が下がった。
昼飯が終わり、開けた巾着の中には大福が3つ。鮮やかな苺が乗って可愛らしいそれに、彼女が「わあ」と歓声を上げる。あいつら、ジジイだから大福を寄越したと思っていたが、もしかすると違うのか?
きっと上司を上司とも思っていないであろうふたりに、今日ばかりは感謝――
と思ったところを、苺大福を頬張る彼女越しにニタニタと笑うふたりを見つけて、感謝など消え失せたのだった。
*1111:月島/ポッキープリッツの日
「二階堂くんの義手って」
向かいに座る彼女が唐突に口を開いた。昼飯時のことである。白飯から視線を移動させると、彼女は自分の箸を見つめている。
「お箸入ってるじゃない?」
それがという思いも相まり、「はあ」というぼやけた相槌を打つ。
「ポッキー入れたらだめかなあ?」
「、ポッキー?」
「形状似てるし」
「……なんのために」
「おやつに」
「誰の」
「わたしの」
「補給は誰が」
「二階堂くん?」
首を傾げる彼女に苦笑が漏れる。
「つまり、二階堂にたかるつもりだと」
「んー?んふふ」
子どものような笑顔に、菓子で釣れるなら安いものだと内心思う。
「あ、もしかしてプリッツ派?」
どっちもおいしいよねと続く会話を聞き流しつつ、食事を再開させる。
――どうでもいいが、ポッキーはどちら向きに入れるのだろう。そもそも箸はどう入っていた?と、ひとり頭を悩ませながら。