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最近たまに、夢をみる。
最初、それはただの記憶の断片だった。
スコッチと今より少し短い髪のバーボン。鋼色じみた黒と金糸のような輝きというコントラストが綺麗だった。二人が向かい合って話し込んでいる様子を、私は少し離れた所から眺めている。
そちらに意識をむけたまま、恐らくベッドであろう場所にごろりと体を転がすと、何かサラリとしたものがむき出しの腕をかすめた。手持ち無沙汰の私はいつも、それを手繰って指に絡める。掴んだものは艶やかな、長い黒髪だ。
次第にそれにも飽き、その髪の流れ着く先へ身を転がしていけば、背中が温かいものに行き当たる。
そのままそのぬくもりに背を預けてボンヤリしていると、こちらを見遣って困ったように笑うスコッチと、呆れた顔のバーボンと目が合うのだ。
私がそれを夢だと思うのは、背に感じるぬくもりにかけらも覚えがないからだ。それに加えて二人の声は聞こえるのに、第三者であろう体温の主の声は聞こえない。
初めからまるで存在していないかのようにすっぽりと。
かろうじて、空気の震える感触だけが肌を伝う。背後に身動ぎを感じるものの、私の中ではかつて、そこに誰もいなかったのだ。
その筈の場所へ、知らない誰かが存在している。記憶を掘り起こすまでも無く、その知らない誰かは、夢以外の何物でもなかった。
けれど夢の終わりに不意に、私の頭へ触れてくる温かい感触には妙に現実味があった。その触り方を、その手の温度を、私が本より知っているかのように。
その手は大きく、少し厚い感触がして不思議な重みがあった。その手の動きに合わせて、私のハシバミ色が視界を滑っていく。
暗い組織の中で終ぞ味わったことのない穏やかさ。
体中に満ちた充足感が零れてしまいそうだった。
それを恐れるように身を丸め、しかし満足げに私は目を瞑る。
「――― シードル。ねぇ、起きてください」
夢とは違う、ひんやりとした掌が、私を眠りから掬い上げる。
目を開ければ視界の端で、薄明りに透けた金糸が揺らめいた。