目の前でのんびりストローを啜っているこの男。やはりまだ私は信じられないが、名を黒子テツヤというらしい。
確かに色素の薄い髪と眸はどこぞで見たかもしれない。しかし立体的で見るのと平面で見るのとではやはり違和感があるもので、鼻の形は?髪の質感は?などと無遠慮にもじろじろと観察してしまった。
ただ、彼はそれに微塵も気にした様子はなく、何故か馴れた様子だった。やはり周りが濃い分、ギャラリーからの視線が多くあり、必然的に馴れたのだろうか。
美形か否かで訊かれるとどちらにも属さなかった。所謂しょうゆ顔だ。彼は私がそんな失礼なことを考えているのを分かっているのかいないのか、ずずっと音を立てた。
とりあえず。
「サインください」
「…?お届けものですか?」
「ちげーよ」
彼はそれに小さく笑った。
私の返しが気に入ったのか、先ほどよりも少し雰囲気を和らげて話し始める。
「四人目、です」
「?」
「あなたで四人目」
「なにが?」
「来た人が、です」
「はぁ?」
黒子の意図を掴みあぐねてちょっぴり柄の悪い返答となる。
この子、こんなに意志疎通が面倒くさい子だったっけ。そう遠い記憶に思いを馳せた。
そもそも、そんなにしっかりと黒子のバスケを読んだことがないし、にわか程度の知識しか持ち合わせていないから、ほとんど曖昧に彼の像が出来上がっている節目がある。
いや、そもそも彼は平面でしか見たことがなく、平面上のある一部分の彼しか知らないのだから、実際黒子がそういう人間だったとしてもおかしくはないだろう。
「どういう意味?」
いま一度問うと黒子は空になってしまったシェイクを見つめ、逡巡し、腰を上げた。恐らく二杯目でも買いに行くのだろう。
「言葉通りです」
財布を手に取り、ちらりと視線を投げられた。私はそれにしっかりと絡めると続きを促す。ふむ、と再度彼は逡巡した。
「別のところから来た人が、です」
(20160412)くろこっちが書きたかっただけ。