※人生に疲れた・落ち込んでる人のためのただ零が慰めてくれるだけの話。
※ぜひ、落ち込んだときに読んでください。特にpigのみなさま。
※Thanks----「♪Cry」 jamestown story
「こっちにおいで」
そう言って優雅にソファに沈んでいた零は、ぽんぽんと隣を促した。甘く蕩けるような響きが含まれたそれに、驚いて凝視する。「ん?」しかし彼は薄く笑みを浮かべるだけで、意図を語ろうとはしなかった。
――何か企んでいるのでは?その誘いにのるか否か考えあぐねていると、はやくはやくと子どものように騒ぎ始めたので、大人しく従うことにした。
「いい子じゃ」
私が隣に座ると、彼はとても満足そうに笑った。そして体勢をずらしこちらに身体を向けてきたので、私もそれに倣った。
「さて、」
はらりと落ちる彼の一房の髪。
ゆっくりと眸が細められる。
「どうして、落ち込んでいるんじゃ?」
それはひどく慈愛にみちた表情だった。じっと見つめられてその視線からは逃れられない。ルビーの塊はまっすぐ射貫くかのごとく私を捉えていて、呼吸すらままならかった。彼に飲み込まれてしまいそうだ。
「……ど、ういう、こと……?」
必死に音を作り出した。途切れ途切れのそれは、不格好であるも届いたようだった。
「どうにもこうも、名前。ひどく辛そうな顔をしておるよ」
そう言って彼は困ったように笑った。
「何かあったんじゃろ?我輩に隠しごとができるとでも?」
「べつに、なにも、」
「こら、強がるんではない」
つん、と額を小突かれる。
「話したら楽になるかもしれんぞ?それとも、我輩はそんなに頼りない男かのぅ」
「…………、」
「…ふむ、」
予想外の展開にあたふたしていると、引き寄せられ、気づくと彼の胸元にいた。じんわりと彼の体温が伝わってきてひどく安心する。ほっと息がもれた。
心臓の音も聞こえた。一定のリズムを奏でるそれはとても心地が良かった。
彼に抱き締められている。
たったそれだけのことでこんなにも落ち着けるのはなぜだろう。
「我輩はただ、聞いているから」
零のニオイがする。
ぼんやりと微睡み始めたなかで、そんな当たり前のことを思った。
「……れい、」
「知っておるよ」
「?」
彼はまるで子どもをあやすかのように私の頭を撫で始めた。彼の耳障りのよい声が、すぐ近くで、私の脳を、心臓を、強く震わす。彼は人を惑わす力でも持っているのだろうか。吸血鬼だから?夢か現か判断が鈍り始めてきていることだけは分かった。
「知っておる」
彼はそう繰り返した。
「名前がとても頑張っていることを、知っておるよ」
「――っ、」
衝撃的な一言だった。
「偉いのぅ、名前は。我輩はそんな名前を尊敬しておるよ」
「大丈夫じゃよ、名前はこんなにも頑張っているんじゃから」
「すこぉしくらい休憩して、泣いてみてもいいんじゃないかの」
「れ、れい……、」
「本当に、よく頑張ったのぅ、名前」
ちゅ、と先ほど小突かれた場所に彼の唇がおりてきた。
(20160724)大人になると誰からも褒められないですからね。それが大人なんだって思いますけど、たまにはこうやって褒められたい。そんな欲求を満たすお手伝いができたらいいなと思います。きっと瀬名泉も慰めるの上手だろうなあ。