※朔間家長女(姉)
「!?」
家路をのんびり凛月と二人で歩いていた。
すると突然腕を引っ張られ、そのまま近くの家の外壁に押し付けられる。抗議の声を出そうにも口を手のひらで塞がれてしまい、中途半端な音になるだけだった。
「しっ。」
声を落とした凛月は顎先をくいっとやる。
そちらを見れば、そこには零の姿があった。どうやら彼も家に帰る途中のようだ。
それにすべてを理解した私は、ゆっくり頷く。凛月はすんなりと口を解放してくれた。
「……びっくりした。」
「ごめん、でも嫌だったから。」
せっかく名前と二人きりなのに、と彼は頬を膨らませる。そして兄にバレていないか再度確認しようと顔を動かして、はたと止まった。
「り、」
何かあったのかと名前を呼ぼうとしたのだが、即座に止められてしまった。彼の人差し指が唇に触れた。
警戒心に溢れた彼は、視線を兄から外さない。私も倣ってそろそろと目だけを向けたが、どうやら零は何かしら感付いたようだった。辺りをきょろきょろと見回して、首を傾げていた。
「……あのバカ兄者、」
そう憎々しげに呟き、凛月は舌打ちした。指はまだ離れない。
私は苦笑いした。
恐らく凛月は零がいなくなるまでここを離れようとしないだろう。どうせ家に帰れば零に会わないわけにはいかないのに、今この場で出会っても特段変わりはないはずだ。私としては、そんなくだらないことで貴重な時間を潰すよりもさっさと帰りたかった。
とりあえず彼を宥めようと、頭をぽんぽんとしてやる。すると睨むように兄を見ていた彼は、意識をこちらに向けた。話せないので、目だけで訴える。
「……。」
一瞬、凛月は何か思案していたようだった。
そしてなぜか顔が近付いてくる。
「―――もうちょっと、待っててね。」
彼の指越しにそれが触れた。
(20180425)リハビリ。