弱虫と海のさよなら談義
夜の海。夜光虫の青い波に、海とつながるような星空。寄せては返すしずかな波の音をききながら、真琴はとなりを見ないままいった。
「ひととさようならをするとき、そのときはじめてそのひとと出会った意味がわかるんだって」
児童心理学の先生はそんな雑談がすきなようで、出典がわかるものもわからないものも、自分が好む言葉を紹介したがるくせがあった。それが案外楽しくて、ついノートに書きすぎてしまう。
「…………そうなのか」
ぽつりと呟く遙の、海に目を向けたままの瞳が湖面にさざなみが立つように揺れる。愚直なまでにまっすぐな青い瞳がほんの僅かに揺れるのは、夜の海より、夜光虫より、ずっときれいだ。
さよならを、既に互いにいくつもしたあとだった。わかるような、わからないような、そんな不思議な感慨に浸っているのだろう。出逢っては別れ、行き違い、そうして大人になってきたのだし、これからもそれが繰り返されるのだと、もうわかっている。
「だけどさ」
こえがふるえなければいいと、夜空に散った星にやぶれかぶれな気持ちでねがった。きっと、ほんとうに怯えていたのだとおもう。あえてそう発音したはずの声は、予想よりもずっと不自然なまでに軽かった。
「おれは、ハルと出会った意味なんて、ずっとわからなくていいや」