あるいは懺悔
「未練なんかないよ」
星の無数に光る警戒区域の空を見上げながら彼は言った。未練なんかない、そううたうように告げた声は感情をひとかけらもうつさず空虚に軽いのに、それでもわたしの頭をおもいきり強く打った。言葉の意味を理解するまえにじわりと浮かんだ涙を瞬きと夜に隠して、わたしはただ「そっか」とだけつぶやいた。
声は震えなかった。星をその背に負いながら、彼はわたしを振り返って微笑む。
「だけどさ」
震えない、彼の声はささやかだった。微笑んで、けれどうつむいて。
その表情は、夜に隠される。
「残念なことが、ひとつだけあって」
はあ、と息を吐きながら。
掠れた声がぽつりと落ちる。
「あのひとの背を、越せなかった」