戻らない日を待っている
勝って嬉しい、負けて悔しいを繰り返してお互いに強くなっていくライバルがいた。もう随分と遠い話だ。
『ダンデ君、あたしね、』
未練を隠しきれないまま、だけど微笑んで振り返る在りし日の彼女を思い出す。『おばあさまの跡を継ぐことにしたの』、穏やかな声を思い出す。
『だからこれが最後の勝負』
名前を呼ばれて目を開ける。エキシビションマッチの時間が来たことを告げるスタッフに頷いて、スタジアムへと向かう。
十年はあっという間に過ぎた。どんな勝負にも勝ち続けているうちに《無敗》《無敵》と謳われるようになった。だが幼い日を思い出さない日はない。勝って嬉しい、負けて悔しいを繰り返して切磋琢磨したたったひとりの好敵手。
彼女のいない勝負の世界で、ダンデは未だ敗北を知らない。