魔女の死んだ日


 北の国の冬には珍しく、その日は朝から晴天だった。空が白く見えるほど強い朝日と、天上に広がる雲一つない青い空。長く降り続いたせいで積もり積もった雪が風に舞い上がり、きらきらと日を透かして光っている。誰も足を踏み入れないから無垢な白のままの雪の上に寝転がりながら、ミスラはもうこの青空の下のどこにだって彼女がいないのだということを知った。
 はあ、と息を吐く。白い靄が所在なさげに揺らめいて消える。まるで現実味がなかった。殺しても死なないようなあの魔女の、少女のように天真爛漫な笑顔をもう二度と見ることができないのだということがただ不思議だった。
「春の息吹が好きよ」といつか彼女は微笑んだ。長く厳しい冬の冷たい空気の中に、ほんの少し戯れのように混じる甘い匂いが好き。「さっぱりわかりませんね」とミスラが言うと、「そんな情緒のない子に育てた覚えはないわ」と叱られた遠いあの日。
 あの日の空も、こんな澄んだ色をしていた気がする。手を伸ばして掌ごしに空を見つめながらすんと空気を嗅いでみても、彼女が春の息吹と呼んだあの匂いは感じられなかった。「お腹すいたな」と呟いて、目を閉じて雪の冷たさを思う。