棘と棘
キミがもう世界のどこにもいないと知っていて、それでもキミと会うために生きていた。砂漠で一滴の水をさがすような、宇宙で一輪の花をもとめるような、そんなバカげたことをやめられない。もうボクに感情はなく、もう記憶は過去以上の何者でもないけれど、ボクは最期までキミのことが大好きだった、そのことだけは知っている。
キミがいない世界を何度も繰り返しながら、キミがここにいたらいいのにな、とそんなことを考えた。ボクがこうなったのはキミがいなくなったからだって知ってはいたけれど、ボクはキミに会いたかった。最期まで、ずっと。
キミはたったひとり、何度世界を繰り返したんだろう。数多の世界を繰り返し、たくさん殺したり殺されたりしながらボクは漫然と考える。超然とした微笑みを携えて、大人びた仕草で振り返る少女の姿を思い出す。ねえアズリエル。誰にも聞かれないように秘密ごとをささやいた、涼やかな声を思い出す。耳を貸せよ、そういって少女が耳打ちすることは大抵とんでもないことで、面食らったボクが何も言えずにいるとにっこりと笑った。『臆病者』と嗤う、ひどくうつくしい笑顔だった。
ねえキャラ、こんな結末もキミの思い描いたものかい。
キミが望んでいたものはなんだったの?
もう何も感じない、平坦なだけの未来を何度も壊して作り直して、ボクは何度も問い続ける。記憶のなかのうつくしい少女は、ただ微笑むだけだった。