夢のそのさき


 かつてその美しさを讃えられた鶴丸国永という神は、知らぬ人から憐れみの目で見られるくらいにまで穢れてしまった。
 よごれたのはとしつきに晒されたこの身か、それともかなしみに爛れたこの心か。はてさてどちらだろうと他人事のように思いながら、きみの好きだった花束を風雨で削れた墓石に添える。

 百年待っていてください、と冗談めかしてきみは言った。
『そのあいだにきみがしにたくなっていても、きみはわたしをまっていてね』

「きみ、百年なんかとうにすぎたぜ」
 小さな声はふわりと風に吹かれて春の匂いに溶けていく。

 知っていた。わかっていた。
 きみと、二度と会えないことくらい。

 それでも幾星霜を越えてきたのは、わずかな希望を捨てられなかったからだ。いつかほんとうに約束を守ってきみが会いに来てくれるんじゃないかと信じていたかったからだ。

 その骨さえも世界に還った彼女のための花束は、ただ優しく風に揺れる。