本当に、あいつは鈍感にも程がある。
職場に早く着いてしまい、始業時間まで時間を持て余している。
今日は来客があるのか、始業前だというのに忙しそうに足を動かす総務の人たち。俺は俺でパソコンを立ち上げ、一日のスケジュールと溜まっているメールに目を通した。
「おはようございます!」
学生か?というほどの元気な笑顔で扉を開けて入ってきたのは俺の営業事務をしてくれている女性。
「おはようございます黒尾さん」
「おはよ。今日はいつもより遅いな」
彼女が俺より遅いのは珍しかった。たまに早く来ても彼女が俺より遅いということは殆どなくて、何となく気になった。
「昨日ケンマと飲みに行ってて」
「ふたりで?」
「……?そうですけど」
「ふーん」
それがどうしたんだというように彼女はきょとんとこちらを見る。それはそう、別に俺と彼女は付き合っているわけでもなく、俺が彼女を好きだとも伝えてすらいないのだから。
ふたりで飲みに行くことは何回もあるし、お互い気を遣わず話せる。だから勝手にいい感じだと思っていた。それなのにこんな小さいことで俺ばっか嫉妬している。
「……あ、そう言えばこの前俺も総務の子とふたりで飲みに行ったよ」
「へぇー美味しいお店連れてったんだろうな、今度私も連れてってくださいよ。勿論驕りで」
「あと、昔の知り合いの子もふたりで飲みに行ったなぁ」
「いいですね〜話弾んだんじゃないですか?」
少しはモヤっとしてくれないかと、わざと誇張して伝えても彼女はにこにこと笑ってみせる。何で、何でだよ……。
「……少しは妬けよバーカ」
「え、妬いて欲しかったんですか?」
「うるせー、この鈍感」
「ふっふ、黒尾さん意外と可愛いところもあるんですね」
っていう友達以上恋人未満なふたり。