どろどろに甘やかすクロオの話
『どうしたの?何か辛いことでもあった?』少しの変化にも気づいてくれて。『頑張ったな、ほら、俺の胸で泣きなさいよ』その時欲しい言葉をかけてくれて。『休んでていいよ、俺がやっとくから』自分が堕落していくのがわかるくらいに甘やかされて。
『俺以上に〇〇のこと愛してる奴なんていないと思うけど』私には勿体ないくらいの、惜しみない愛をくれたクロオ。『はー、その顔、他の人に見せちゃダメだよ』と、蕩けるような口付けを交わし。『〇〇の全部、きれいだ』そう言葉を紡いで深く愛し合い。私はこの先クロオがいないと生きていけないんじゃないかと不安が過ぎるくらいにはどろどろに甘やかされた。
だから一度彼から離れてみようと思い、別れを告げた。一悶着起きるかと思いきや彼はあっさりと『わかった、待つよ』そう言ったのだ。
それから月日をかけて何人かとお付き合いまで行ったが、やはり何か物足りなかった。それが伝わってしまっていたからか「お前、俺の事見てないだろ」「誰と重ねてみてんの?」決まって別れはその言葉で。振られることにも慣れてしまった。
「何連敗ですか?」
「……うるさい」
私と別れてから付き合った人でさえも把握してるくせに。わざとそう言って笑うんだ。
「そろそろいいんでない?」
「私をこんなにさせた責任とってよね」
「一生かけてとらせていただきます」
久しぶりに重ねた唇は、熔けてしまうのではと思うほどに熱かった。
きっと彼は絶対自分のところに戻ってくると、そう確信していたのだろう。久しぶりに包まれた彼の腕に、私の居場所はここだと思わせる安心感。悔しいけれどからだの全てが彼を覚えてしまっていて、到底忘れられるはずがなかった。