雲雀
今日は久しぶりに定時だと喜んだ直後、仕事を振ってきたクソ上司を恨んだ。
そこまで遅くならずに済んだが、こっちは蓄積された疲労がたまっている。今月何十時間残業したと思ってるんだ。
同棲している恭弥の大きな屋敷にうつらうつらしながら帰宅し、すぐにシャワーを浴びた。棚から就寝用の浴衣を引っ張り出し袖を通せばなんだかいつもより大きい気がする。でもまぁ、大は小を兼ねるっていうしね。一ミリも働かない頭のまま寝室へ向かえば、報告帰りであろう草壁さんとすれ違った。
「お帰りなさ……って、それは……」
「おつーそしておやすみなさい草壁さん」
ぎょっとしながら何かを言いかけていたけれど眠くてそれどころではない。
「恭弥おつー、ただいま、そしておやすみ」
寝室の襖を開け、全ての挨拶を一気に済ませふかふかの布団へ倒れこんだ。
「おかえ……ちょっと、何なのその格好」
「寝間着」
「……はぁ、もしかして草壁とすれ違った?」
「うん、おやすみって言った」
落ちてくる瞼に抗えず枕に顔を埋め目をつむったまま、ギリギリ意識を保って会話をしている。頼むからもう寝かせてくれ。
「ねぇ、ふざけてるの」
彼の声のトーンが少しだけ下がった。
「え、な、何かした?」
その声に驚いて顔を上げれば、覆い被さるように私へ跨る恭弥。
「これ、僕の寝間着。こんなに胸元はだけさせてどういうつもり」
「え、あ……へへ」
なるほど、先ほどの草壁さんの反応も納得ができた。笑ってみたが誤魔化せるだろうか。
「眠いことを言い訳にはさせないよ。注意力を欠けばどうなるかわからせてあげないとね」
首筋から胸の膨らみへ滑る彼の手に、今日も寝不足だと覚悟を決めた。
六道
「むっくろーおかえり!」
「……何ですかこの惨状は」
「ミーは止めましたがこれ以上は無理でしたー」
ドアを開けてすぐ抱き付いてきた彼女とその奥を眺め骸は頭を抱えた。
「べろべろではありませんか……」
目に飛び込んできたのはソファーや床に潰れている犬や千種の姿。クロームでさえフランから奪ったであろう被り物を枕にして寝ている。
「むくろ、見て見て」
彼女は酔った身体でくるりと危なっかしく回って見せた。しかしいつもと変わらない服装なのにと疑問を覚える。
「……おや、これは幻覚ですね」
「師匠ー本当に大変だったんですよー。回らない寿司で労ってくださーい」
その声と同時に幻覚が解けると、目の前には骸の服と上着を着ただけの彼女の姿があった。シャツは下着が透けてるし、小さい彼女に上着は長く引き摺っている。
「因みにズボンは長くて歩けないと怒って脱ぎ捨ててましたー。隠したミーに感謝してくださーい」
「はぁ……今日ばかりはよくやりましたねフラン。そしてなんて格好をしているんですか貴女は」
「えー?むくろに包まれたかったから」
長い袖で自分の頬を挟み、いたずらっぽく笑う彼女を軽く抱き上げた。お酒で頬を赤く染め自分の服を着る彼女を前に、腹の底から湧き上がるものを我慢することはできない。
「フラン、あとは頼みましたよ」
そう言い残し首に腕を回ししがみつく彼女を抱え自室へと向かう。
「……全く貴女は」
ベッドへおろし彼女へ覆い被さるように跨り啄むように唇を落とす。
「帰るなり煽るなんて。明日は寝不足ですからね」
「ふふ、このためにお昼寝したもーん」
そう目を細める彼女の濡れた唇へ、もう一度噛みつくようにキスをした。