3年E組は、居心地良い。

E組の生徒になって、1ヶ月。クラスの子と馴染むのに、そう時間は掛からなかった。本校舎の頃から顔見知りな子達が居るという理由もあるけど、みんなとにかくフレンドリーだ。1人1人個性的で、とても面白いクラスだ。

そして殺せんせーの存在。標的と暗殺者、先生と生徒の関係を絶妙に上手く取り持っている。殺せんせーも生徒1人1人ときちんと向き合ってくれている。そんなE組が本当に心地良い。

…だけど、決してあの日の殺意を忘れた訳ではない。

あの日、1人の女の手によって私の大切な家族が奪われた。…いや、違う。正しくは殺されたのだ。

ナギサ。

それが、その女の名前。

クラスメートの潮田渚君のことではない。最初、彼の名前を聞いたときは吃驚したけど…。

その女は、誰もが知っているカリスマ女優。子役の頃からその天才的なセンスと才能を開花させ、お茶の間をあっという間に賑わせ、様々な役を見事に演じ切ることから、千の顔を持つ女優として、今も世間やメディアから注目を浴びている。

その反面、私の家族を殺した凶悪な殺人犯でもあるのだ。

きっと、そんな有名な人気女優がとある少女の一家を殺害したとは知らず、世間は賑わっているのだろう。

そう思うと、腸が煮えくり返すぐらい殺意が沸々と込み上げてくる。

私はナギサを殺る為にE組へやって来た。この教室では勉学はもちろん、暗殺も学べる。そんな一石二鳥な話を私に教え、E組へと勧めて下さった理事長先生には本当に感謝している。

…少し予定が狂ってしまったけどね。

ナギサ暗殺計画は、義務教育が終了した中学卒業後。家族を失い、独り身の私を育ててくれた祖父母には迷惑をかけないよう、ひっそりと殺る予定でいた。

もし、その行為が見つかり、私が捕まったとしても、2人を犯罪者の関係者だと知られないよう、手を尽くすつもりでいた。

しかし、殺せんせーの暗殺に失敗してしまったら来年の3月には地球は爆発。私もあの女も死ぬ。そんなのは御免だ。

あの女だけは、何が何でも、私の手で殺ると決めているのだから。…誰にも邪魔はさせない。

暗殺計画の予定が少し早まってしまうけど、それは追々、考え直すことにしよう。

来年の3月まで、残り335日。

「ねえ、ナギサ。私の殺意を受け止めてくれるよね?」

私の呟きは、そっと暗闇に包まれた。隣の部屋で寝ている祖父母に聞こえはしない。

机の中に仕舞ってあった1枚の写真を取り出し、その中心をボールペンで勢い良く突き刺した。

そこに写っていたあの女の笑顔は、一瞬で歪んでしまい、少し笑えた。

月の明かりだけが、今の私の姿を見ていただろうか。復讐という底無し沼に嵌まってゆく滑稽な私の姿を。

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