防衛省の烏間さんが表向きのE組担任と体育の教科を担うようになり、殺せんせー暗殺の為に私達にナイフや狙撃等、暗殺に必要な基礎を指導され早一週間。

最初は慣れない動きや銃の扱いに困惑したけど、烏間先生の指導は分かりやすくて好きだ。そんな体育の時間に慣れてきた頃、油断していた私は軽い捻挫をしてしまったのだ。

「片岡さん!大丈夫!?」
「足を捻ったのか、歩けそうか?俺が保健室に…」
「にゅやッ!?片岡さん大丈夫ですか!?ど、ど、どうしましょう烏間せんせー?!!」
「まずお前が落ち着け」

クラスメートや烏間先生、殺せんせーから声を掛けられ、これ以上授業の妨害は出来まいと思い、「一人で行けますので大丈夫です」と喉まで出かけた言葉は私の前に現れた彼女の言葉によって飲み込んでしまった。

「私が彼女を保健室まで連れて行きます。烏間先生は授業の続きを、殺せんせーは少し落ち着いて下さい。片岡さんは私が責任持って連れて行きますので」

名前の凜とした声が聞こえた。

「名字さんなら大丈夫か〜」
「名前ちゃん!メグを頼んだよ!」
「すまない名字さん、片岡さんを頼むぞ」
「せ、せんせー落ち着きますね!ヒッヒッフー、ヒッヒッフー」
「「おまえは妊婦か!??」」

飛び交う安堵の声や相変わらずな殺せんせーとクラスメートのやり取りを聞き、私は胸を撫で下ろした。

「…メグちゃん、大丈夫?歩けそう?」

私の顔を覗き込みながら、手を差し出す名前にありがとう、と返し、手を取り立ち上がろうと試みるも、想像以上の痛みが足首に襲い、口から小さく悲痛な声が漏れた。

「腫れてきちゃってるね…。ごめん、メグちゃん。少しの間我慢してて」

名前の言葉に疑問を抱きつつ、じんじんと骨まで響く激痛に耐えていると、地面から足がふわっと離れ、浮遊感が私を襲った。

「えっ?」

自然と溢れた言葉は周りのざわつきですぐに掻き消された。

「きゃー!お姫様だっこだー!ステキー!」
「どうしよう名字さんがイケメンにしか見えない」

周りで騒がれてる当の本人はなに食わぬ顔で「メグちゃん、もうちょっと太ってもいいんじゃない?」と爽やかな笑みを私に向けた。

「えっ、ちょ、名前!?」
「こらこら、動いちゃダメだよ」

自分には縁が無かったとはいえ密かに憧れを抱いていたお姫様だっこが、まさか同性である名前に初めてを簡単に奪われてしまい、普段ならされる側よりする側だったお姫様だっこは、される側がこんなにも恥ずかしいとも思わなかった。

…でも、真剣な表情で私を保健室まで運ぶ名前の横顔を見たら何も言えなかった。同性の私が惚れそうだ。

名前が男だったらすごくモテるんだろうなぁ、なんてくだらない事を考えながら、当分落ち着きそうにない胸の鼓動の存在を忘れさせることに、ただただ必死だった。

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