「名字、俺とLINE交換しようぜ」
「ごめん前原君、私、LINEやってなくて…」

休み時間にスマホを片手に名字の机の前まで訪れば、あっさり玉砕。周りにいた松村や吉田に「前原って名字がLINEやってねーの知らねーんだ?」「まぁ、俺らは名字のメアド持ってるけどなァ〜」とニヤニヤする野郎共に内心舌打ちした。

「へ、へえ、そうなんだ〜。名字ってガラケ?」
「私、機械音痴だし、ガラケの方が使い易くて…」
「そっか〜。じゃあさ、メアド交換しよ?」
「うん、いいよ」

よっしゃー!名字のメアド、ゲット!と、内心ガッツポーズを決め、赤外線機能のない俺のスマホは、手作業で名字のアドレスを打ち込んだ。

その日の夜に早速、『前原だよ〜!メアド登録よろしく{emj_ip_0006}』とメールを送った。スマホをベットに投げ捨て、漫画を読む態勢に入った瞬間、スマホが震えた。

『名字です。メアド登録したよ(*^o^*)』

返信早っ!顔文字かわいいなぁ〜。と色々思いながら、俺から話題を振って、名字とのメールのやり取りを楽しむことにした。

名字とは色んな話をした。好きな食べ物や趣味から始まり、E組や殺せんせー達の裏話や噂話等、くだらない話を夜中の1時までやり取りしていた。

『ゲッ、もう1時かよ〜{emj_ip_0097} 名字と話してたらあっという間だよ{emj_ip_0001}』
『夜更かししちゃったね(>_<) 前原君とメールするの楽しくて、つい時間忘れちゃったよ(^o^)』

ああ〜!!名字可愛すぎかよ!!デートしてえ〜!!思いきって誘ってみるか?いや、いきなりだと引かれるか?と、頭の中でぐるぐると考えていると、頭がゆっくりと舟を漕ぐ。

あっ…ヤベェ……寝そう……。

気付いた時にはすでに外は明るくなっていた。…え、俺、寝落ちした?ガバッと起き上がりスマホを覗けばメール画面のまま表示されていた。

『悪りぃ名字! 昨日寝落ちしちまった{emj_ip_0033} ホントにごめんな!』

慌ててすぐさま返信し、学校の準備をしながら、そわそわと名字からの返信を待っていた。…が、結局返信が来ないまま、俺は学校の下駄箱まで辿り着いた。

未だに名字からの返信なし、か。もしかして昨日勝手に寝落ちしたから怒ったとか?いや名字はそんな奴じゃねーし、このまま名字と会うの気まずいなぁ…。

「あ、前原くーん!!」

ふと後ろから名前を呼ばれ振り返れば、頭の中で占めていた人物がそこに居た。

「名字…!その、昨日は寝落ちして返信遅くなって、ごめんな?」
「え、そんな!全然気にしなくていいのに。私こそ、朝返信出来なくてごめんね」

実はこれを買ってて、返信する暇なかったの。と、名字は俺にコンビニ袋を見せてくれた。

「それ、中身なんだ?」
「昨日遅くまでメールに付き合ってもらったからさ、授業中寝ないように買ったの」

袋の中には眠気や疲れが吹っ飛ぶエネルギードリンクや昨日メールで会話した俺の最近ハマってるお菓子まで入っていた。

「これ、前原君にあげる。今日も1日、頑張ろうね」

暗殺もね!と、俺にコンビニ袋を押し付け、そのまま教室へ走り去っていく名字の姿を、唖然としながら見送った。

………ありゃ、モテるわな。

隣の席の岡野に今までの出来事を伝え、「お前もこんくらい気遣いがあればな〜」と本音を漏らせば、無言で思いきり足を踏まれた。


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