つまりは、そういうこと






 冬島隊うちの部隊の新入り。ひよっこ隊員ーーー苗字名前ーーーは、今でこそ競争率が高く、他所から勧誘されているような とんでもない実力者なのだが、冬島隊入隊当初は誰からも見向きもされなかったようなフリーの狙撃手だった。

 同じ空間でC級B級A級が狙撃訓練を行う空間の中でさえも、あまり目立たない方の奴だった筈だ。嵐山隊の佐鳥が、よくガン見しながら顔を赤くしている様子から存在だけは知っていたとはいえ、俺を含め、多くのボーダー隊員の苗字名前への認識は、その程度だった筈だ。佐鳥賢に対しての、揶揄うネタとして名前を使ったことも、しばしばあったが、その程度の奴だった。関わりがあった記憶もない。しかし、当時の佐鳥には(今現在も進行形で思っているのかということまではわからないが)アイツが可愛く見えたらしい。まあ確かに、当時は今よりもパッとしていた。隠すのが勿体ないような真っ直ぐなスミレ色の瞳を輝かせて、的を狙うアイツは確かに当時の方が今よりも人気だったということは間違いない。しかし、俺としては一生関わることもないと思っていたから、佐鳥用のネタとしては当時から名前を出していたが、凄いと思うような存在ではなかった。決して。決してだ。大切な事だから2回言った。






 ーーーーしかし状況は変わった。

 冬島隊を結成して、だいぶ落ち着いてきた頃。冬島さんが突然「あるボーダー隊員を勧誘しようと思っているんだがどうだ」と俺とオペレーターである真木ちゃんに尋ねた。ソイツの名前こそ、苗字名前だ。もちろん、反対した。その言葉は今でも覚えている。



『らしくねーんじゃねーのか、冬島さん。俺が見てる限り、ソイツは隊長が目につける程の実力はねーよ』



 いつもと違ったのは、俺が引かなかったのと同じように、冬島さんも なにが引っかかるのか珍しくソイツの入隊については引かなかったところだ。珍しいこともあるものだ。『凄い隊員』という印象を、これっぽっちも感じない。そんなやつを隊長が「気にしてやったらどうだ」だとか「面白いやつがいる」だとかではなく、『冬島隊に招き入れたい』と言った。加えて、引く様子が全くないとみた。気になった俺は狙撃訓練に頻繁に顔を出すようになった。

 すると、どうだ。そいつは俺が顔を出す時、いつだって その場所にいた。毎度毎度見に行く度に真剣な顔をしてスコープを除いて引き金を引く姿には素直に感心した。その頃、3週間という期間。1週間の間に4回は通っていた訓練場に毎度毎度いる 苗字名前という女が一体いつ通っていないのか。それが気になった俺は、ひと月かけて毎日通うことになるのだが、そいつは毎日毎日必ずそこにいて、例の如くスコープを除いて的を射抜いていた。そして、思った。


「(毎日いるなら毎回会うだろうよ)」


 ひと月通うことで、ようやく 苗字名前について少しだけ知った俺は疑問を抱いた。『一体いつからこんな事をコイツはしてきたのだ』と。気になって、兎に角、苗字名前に関する情報を手当たり次第に調べた。資料を漁っていて、まず最初に得た情報は苗字名前の入隊時期が佐鳥と同じタイミングであったということだった。だから、あいつは苗字名前について知っていたのか。納得すると同時に、その女の、資料の少なさに驚く。当然だ。苗字名前は、入隊してから今までの期間、ずっとフリーの隊員なのだ。ずっとフリーというだけで、ここまで情報が少なくなるのか。シンプルに驚きである。

 次に俺が赴いた場所は、モニタリングルームである。冬島さんが苗字名前に目をつけた理由はきっと、あの信じられない練習時間にあると、この時すでに確信していた。エンジニアの引きこもって作業をする部屋の一室、モニタリングルームの扉を開けると、冬島さんは「遅かったな、当真」と俺に声をかける。なんだよ、筒抜けかよ。心の中で毒を吐いて「どうせ、あの調子で毎日通ってるから目をつけたんだろ」。行動が読まれていたことが悔しくて、吐き捨てるように口にする。そんな俺に隊員は「行ってみな」と。すぐ隣の『資料保管庫』を指さした。







「…………まじかよ」



 思わず、笑いが込み上げてくる。入隊して、まもない頃を除いたって、当時から計算すると約2年。2年間ずっと、苗字名前は、あの狙撃手専用の訓練室で的だけを見ていた。

 素直に驚いた。もはや、衝撃映像でしかない その努力の集大成のような直向きな努力が隊長の心を動かしたというのならば、納得だったし、自分達に提案した時期としては遅すぎるのではないかとすら思った。苗字名前という人間を最近認識した俺にしてみれば、そいつが自分よりも前から入隊しているとは思わなかった。なによりも、これだけ練習して実力を磨いているのにも関わらず、部隊に所属していないという現状に鳥肌が立った。



「ーーーーこりゃあ、すげえや」



 結果として、勧誘の件で折れたのは いわずもがな 俺の方だった。正直、俺は あそこまでストイックな奴は見たことがなかった。ランク戦にも出ない。チーム戦もしない。それじゃあ、実力が伸びているのかということもわからないだろう。それなのに、ボーダーに所属し続ける忍耐力。そして、恐らく 相当な腕を持っているのにも関わらず、なにかに取り憑かれたかのように前だけをみている あの狂気じみた並々ならぬ何かへの執着。尊敬すら抱いてしまいそうだ。


 ああ、まったく。
 あの女が、B級ソロで丁度良かった。


 A級入りをして間もない俺達の誘いを二つ返事で、とびきりの笑顔で引き受けた苗字名前には少々驚いたが、引き受けてくれたからこそ、思う。おまえみたいな頭のおかしい奴は味方にいる方が心強い、と。

 ーーーとはいえ、こんなにもアッサリと引き受けてくれたことには正直驚いた。これだけの長期間、B級で燻っていたということは、少なからず、B級でいることに何らかの意義を見出しているものだと思っていた。ただ、多分。あの言葉が良かったのだろう。



「俺らとA級1位、目指そうぜ」



 あの言葉を口にした時、苗字名前という女は、ほんの少しの間だけ目を丸くして「A級1位って本気ですか?」と俺を見上げる。俺は、後ろに控えている真木ちゃんと隊長の方に視線を向けて「少数精鋭でA級1位なんて最高に格好いいと思わねーか」と苗字名前に向けていう。その発言を受けて、苗字は「滅茶苦茶格好いいですね」と口にして、いつもの訓練中以外の時にみせている見下しているーーーいや、気怠げな瞳を僅かに光らせて「丁度よかった」と俺の手を取る。

 その行動に後ろにいる隊長は安心したように息をついて、真木ちゃんの方は苗字名前の明らかな変化に「……へえ」と呟く。



「ちょうど、私にも超えたい部隊があったので 入れていただけるのであれば、喜んで」








 そりゃあ、目立たないはずだ。真木ちゃんと一緒に苗字名前の訓練の様子を作戦室のモニターから確認していて、改めて思う。この女は、あまりにも その凄さがわかりづらい。

 この俺ですら、防衛任務をするまでは、苗字名前の認識を『努力馬鹿』としか認識できていなかったくらいには、わかりづらいのだ。だが、部隊として共に行動しているといやでもわかる。この女は、ある意味では、まるで狙撃手のお手本のような女だった。そして、率先して点を獲りにいく俺との相性が凄まじく良い狙撃手だった。具体的に、どのように凄いのかというと『味方を援護して点を獲らせる戦い方』が滅茶苦茶上手かった。そして、なによりも侮れないのが、苗字名前のもつサイドエフェクト。



「おいおい、こいつ化け物かよ」
「隊長が部隊に入れたいっていうくらいだから、ある程度の予測はしていたけど…、よくもまあ……これだけ部隊戦で真価を発揮するタイプの隊員が部隊に所属しないでやってこられたね」



 その言葉には同意せざる得ない。しかし、それもこれも、あの苗字名前の人間性あってのものだろう。周りの人間ーーー特に狙撃手ーーーに あれだけ、敵意を剥き出しにしているのにも関わらず、部隊に所属をしているというのならば、それはそれで驚きだ。

 苗字名前の映像を暫く眺めていた真木ちゃんが言う。イーグレットの連弾がどれくらい上手く他部隊に決まるかを知っておきたい、と。それはつまり、他部隊を巻き込んで、部隊戦を組みたいという意味で間違いない。それは流石に次のランク戦までお披露目はしない方がいいんじゃないか。冬島さんの言葉に「A級ランク戦がはじめての部隊戦の本番っていうのは流石にプレッシャーになるよ」と真木ちゃんが返す。それは、否定できない。俺と同様の意見を持っただろう隊長は、あーーーとか、うーーーと、珍しく唸った後に「太刀川隊なら比較的受けてくれると思うが」と呟いた。それを拾って「じゃあ、あとひとつは適当に」と、真木ちゃんが返す。これは、俺の予想よりも早い段階で部隊戦が組めそうだ。そのように思考する俺に対して真木ちゃんは「上手くいけば、名前の射程も誤魔化せるし、今後戦りやすくなるね」と、悪い顔をしていた。







「いいデビュー戦じゃねーの」
「すいません、瞬殺されました」



 結論だけをいうのであれば、冬島隊、風間隊、太刀川隊の3部隊で行われた苗字名前自慢大会は大成功だったといえよう。勝敗云々をいうのであれば、最終的には得点の差で負けてしまったが、初の部隊戦であれだけ部隊に貢献できるということがわかっただけでも、上々の結果だ。特に緊急脱出ベイルアウトのタイミングの判断力と狙撃訓練では見られなかったイーグレットの乱発。俺はやってくれるな新入りと感動したものだ。しかし、このストイックな狙撃手は、あの大健闘といえる爆発的印象を植え付ける事に成功したであろう初戦をたったひとり良く思っていなかった。それはもう目を丸くした。『お前は初戦から太刀川さんや二宮さんを目指しているのか?』と尋ねたくなった程だ。ただ、向上心があるのはいい事だとも思った俺は「次上手くやれよ」と軽く流した。

 そんな冬島隊うちの新たなるエースはイーグレットの乱発をできるにも関わらず「弱いから強くなりたい」と、俺に言う。あれだけの努力と実力がありながら、他になにを求めているのか。よくよく考えても、理解できなかったし、あまり身体に負担をかけるのはと心配した冬島さんから受けた忠告も踏まえて、適当に受け流した。『そんだけ撃てるのになに言ってんだコイツ』と、さえ思って少しイラッとしたというのも理由としてはある。そして同じような質問をされていた冬島さんもまた「強くならなくてもいい」と返していた。隊長の場合は恐らく前後に『お前は既に強いから』と付くのだろうがどうやら本人には伝わらなかった様で冬島さんも一時期滅茶苦茶凹んでいた。







 苗字が作戦室に、あまり顔を出さなくなった。元々、そんなに作戦室に居座るタイプでもなかったが、それにしたって、あまりにも姿を見せない。恐らくだが、俺達が苗字と顔を突き合わせるタイミングは防衛任務以外ではなかっただろう。あの発言が原因だろうか。そりゃあまあ、苗字の本気の悩みを冗談で笑いとばしてしまったことに関しては、悪いとは思っているが、一応俺たちは部隊の仲間なのだから、せめて真木ちゃんくらいには顔をみせてやってほしい。もうひと月くらい顔を見ないから、それなりに心配しているのだ。俺も、隊長達も。

 そうして、久しぶりに俺達の前に姿を現した新入りは俺達の信頼を裏切るどころか期待を遥かに超える戦闘センスを俺たちに見せてくれる。サイドエフェクトを使用しながらアイビスを撃つ。それは、こいつが入隊時に俺と真木ちゃんが冗談で口にしていたものの中で、最も成功率が低いそれだった。理由は本人が言っていたからという事実に加えてもうひとつ。サイドエフェクトを前に一度だけ共有したことがあるが、これが『とんでもない酔いを起こすサイドエフェクト』だったという点。大袈裟に言っているのではなく、たった一歩踏み出すために身体を揺らすだけで酔うのだ。その場から少しでも身動きを取ろうと身体を揺らすだけで酔う。こんなサイドエフェクトでよくもまあイーグレットを撃てていたものだ。相変わらず、目の前の女の狂気じみた執念には頭が痛くなる。



「今度こそ、部隊チームの役に立ってみせます!」



 そういって、初対面の頃とは打って変わって、きらきらとした笑顔を浮かべて微笑む苗字名前は多分もうだいぶ頭がおかしい。俺なんて未だに、共有してイーグレットを撃つだけでだめなのだから、多分一生習得はできないだろう。そもそも、なぜ俺が共有時アイビスを使用しないのかと言うと、引き金を引いた時の衝撃が凄まじく流石のトリオン体でもグラグラと視界が揺れるからだ。そして酔う。本当に酔う。かつて、船酔いも車酔いも全くしなかった俺だがその時初めて、無理だと悟った。そんなとんでもないサイドエフェクトのくせに、一体今度はどんな鬼畜で頭のおかしい訓練を積んだのか。俺も隊長も聞くことは出来なかった。2年間でようやくサイドエフェクトを使用しながらのイーグレット乱発を完成させ、今度はたった数ヶ月でアイビス。

 いや、わかってる。出会って、まもないタイミングで『サイドエフェクトを使用しながらのアイビスは、まだ出来ない』。そういう言葉を口にした あの時にはすでに、とっくに訓練に励んでいたのだろう。つまりは、最低でも半年はやっているな。もういっそ、命を削るほどの訓練量なのではないのかと心配になる。そこまでしても、まだ追い抜くことができたと確信出来ないほどの狙撃手とは一体誰のことだ。そんな人はもう、東さんくらいしか思いつかない。







「ーーーー二宮さん!!!」



 確かに、東さんを超えたいというのであれば、その努力量というのも納得は出来るが、やはり詰め込みすぎだろうと考えていた頃。自分の隊の苗字名前が見たこともないくらい顔を明るくして、駆け出した。二宮隊の隊長をしている『二宮匡貴』だった。どういう関係だ。暫く観察をしていると、どうやら相当親しい関係のようで、二宮さん自身もなかなかみせないレアな表情をして苗字と談笑している。防衛任務前に緊張がほぐれるという意味で、二宮さんと談笑する時間は苗字名前にとっては良かったのだろうが、時間が迫っていたので、呼び戻す。

 ああ、あいつか。その時にいやでも確信した。瞳が『そいつだ』といっていた。まるで、そいつの存在そのものを否定しているかのような冷たい瞳で苗字が そいつに視線を向けたからだ。一体なにをやったら、1人の人間からあそこまで嫌われる事ができるのか。教えて欲しいくらいに分かりやすい瞳をしていた。



「おまえ、もう少し上手く隠せよ」
「……許せないんです、私」



 理由はどうであれ、ああいう視線を向けられた『鳩原未来』は災難だと思う。しかし、そうか。鳩原未来がおまえの超えたい狙撃手か。

 ーーーということは、苗字名前が超えたい部隊というのは『二宮隊』ということになるのか。これはまた、気を抜けない部隊を敵視しているな。まあ、俺達が目指すのは『A級1位』なのだから、どのみち奴らの部隊もまた超えるべき対象で、関係ないのだが。










「だって、苗字って 二宮隊狙撃手の筆頭候補って言われてた時期あったじゃないですか。あの時期の苗字、荒れてたから当真さんが冬島隊に誘ってくれてよかったって思ってたんですよ〜〜」



 そういえば、一時期二宮隊の話題で本部が持ちきりになった時期があった。そういえば、その時に俺は『鳩原未来』という名前を耳にタコができるほど聞かされた。しかし、疑問だ。俺にしてみれば、苗字名前は既に狙撃手として最高のレベルに位置している狙撃手だ。うちの隊の戦闘スタイルだから、そう思うーーーとかそういうレベルじゃあない。あれは、冬島隊うちの隊でやっていくよりも部隊の中に点獲り屋ーーー攻撃の要となるエースーーーがいる部隊での方が活きる駒の筈だ。それはまあ、鳩原未来も同様ではあるけれど、二宮隊のような部隊であれば鳩原未来よりも苗字名前の方が活きたのではないか。

 しかし、二宮さんがこういう判断を誤るとは思えない。なんらかの制約が働いたか。例えば、苗字名前を二宮隊に縛り付けるのを上層部が容認しなかったとか。そういわれれば、納得できなくもないが、それでも二宮さんには苗字を選ぶという選択肢があった筈だ。それでも、鳩原未来を選んだ。だからこそ、苗字は鳩原未来が嫌いなのだろう。しかし、これで上層部の思惑通りということだ。何故ならば、あいつは冬島隊所属後から間違いなく、周りの人間とのコミュニケーションが増えた。それは、冬島隊に所属したからということではない。そうではないが、明らかに話しかけやすくなったのは間違いない。佐鳥賢に限定していうのであれば、二宮隊に収まっていたら、苗字名前に佐鳥が話しかけていたかは審議だ。何故ならば、そうあるべきだと皆が思っていたのだろうから。上からしてみれば、二宮隊や旧東隊の人間以外が集まった部隊であれば、冬島隊じゃなくてもよかったのだろう。そう考えると、俺や冬島さんも苗字の精神状態云々を踏まえて、早い段階で苗字名前に目をつけるようにいいように『誰か』に誘導されたのだろう。それはそれで腹が立つし、その場合、代わりになる他部隊の存在が頭の片隅にチラついて更にムカつくが、今更どうでもよかった。



「苗字のこと、よろしくお願いします!」



 おまえは苗字のなんなんだよ。苗字をよろしくといって深々と頭を下げる佐鳥に軽く右手をあげて背を向ける。そして自分の部隊の作戦室を目指す途中で犬飼澄晴とすれ違った。

 通常であれば、にこにことした仮面のような笑顔で俺に「名前ちゃんは元気にしてる?」だとか「そういえば、名前ちゃんはね」と聞いていないことをベラベラと話をする。苗字名前のおせっかいな親のような面倒くさい男だった。しかし、今日に限っては、違う。犬飼らしくもない。俺を射るような視線を向けてくる。



「名前ちゃん、冬島隊だったんだって」



 こいつ、今更大丈夫か。何をいっているんだ。苗字名前は、もう随分と前から冬島隊に所属している。ただ、そういう正論を求めているのではない。犬飼澄晴は静かな怒りを俺に向けて、俺は その怒りに足を止める。



「ーーーー……名前ちゃんに
 居場所をくれて、どうもありがとう」



 本人には絶対に言わないが、絶対に思っていなかった。いまですら、そう思う。ただ、犬飼澄晴は苗字名前の冬島隊入りを、どちらかといえば喜んでいた筈だ。だからこそ、俺に会うたびに、名前ちゃんは名前ちゃんはと情報をよこした。一体全体、どんな心変わりだ。おまえのその態度は『大切なものを横取りされたやつ』の態度によく似ている。しかし、本当にそうであれば、犬飼はもっと早く、それこそ、冬島隊入隊直後にそういう態度・・・・・・をみせていた筈だ。それなのに、何故このタイミングで突然そんなことをいうのだ。意味がわからない。

 サイドエフェクトを使いこなした上でアイビスを撃ち込めるようになった才能を見込んでの言葉だろうか。いや、有り得ない。いずれは二宮隊に迎えいれようと考えていたのならば、兎も角。それは有り得ないだろう。例えば、今現在。その枠が空白であったとしても、だ。二宮さんは多分、その枠に鳩原未来以外の人間をいれない。そして、苗字は、その事をよく知っている。鳩原未来の凄さも、だ。だからこそ、余計に有り得ない。




「どういたしまして」

 だから、多分ーーーーー。













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Espoir