息がとまる瞬間
例えば、苗字名前が冬島隊じゃなかったらどうする? という奈良坂の質問に俺もユズルも目を丸くして「は?」と言葉を漏らした。どんな例え話だよと目を細めると奈良坂は「例えばの話だ」と、一番奥で狙撃の練習をいつまでもいつまでもしている我が隊のエースを視界に捉えて言う。例えば、うちの苗字が冬島隊ではなかったとしたらーーーその場合あいつはきっと部隊入りすらしてないのではないかとさえ思うけれど、それもまた審議である。実際、いつかのタイミングに冬島さんから聞いた話によると風間隊と二宮隊隊、それから玉狛第一も目をつけていたらしい。
それなら何故誘わなかったのか。これに関しては、周りの出方を伺っていた。もしくは隊員が上限一杯だったとかが原因だろうと踏んでいる。風間隊に関しては使い方を考えていたとか、菊地原で随分と
「つっても、あいつが
「確かに 名前なら何処でもやっていけそうだけど冬島隊のイメージが強いよね」
「ガード緩かったらウチが貰うんやけど」
「やめなよ、隠岐先輩。また撃たれるよ」
「
「名前の狙撃はデータでも勉強になるから」
「データあるんならリークせな」
「ほー、俺達をB級に落とす気か? 隠岐」
「冗談やって〜。流石の俺もマメちゃんまで巻き込む事はせぇへんよ〜」
調子のいい奴だなと笑うと隠岐は「だってマメちゃん ほんまに可愛いじゃないですか〜」と言って苗字に視線を移して顔をだらしなく緩ませた。その様子にユズルは真面目に引いていたし、俺も真面目に引いた。お前一応 生駒隊長にイケメン枠として捉えられてんだから そういうものとしてキャラを守れよ。
そんな事を考えている間に、質問してきた奈良坂は無責任にも片付けを始めて、ユズルも興味なさそうにして苗字と佐鳥の苗字ワールドに加わっていた。流石にカゲの部隊なだけあってユズルも苗字と仲が良いらしい。そもそも呼び捨てしてる時点で相当だ。
「そーいや、そのマメとかいうのが何だって苗字と真木ちゃんが気にしてたぞ」
「ああ、ウチの部隊だけの呼び名やから しゃあないわ。因みに付けたのはイコさんなんやけど、ほんまにセンスあるわー」
「由来を言え、由来を」
「マジで女神、略して『マメ』なんやて」
「ただのクソニックネームじゃねーか」
「うそやん。滅茶苦茶センスあるで」
「ねーよ」
そんなことを言ったら、俺のつけているニックネームの方がよほどひどいと非難する隠岐の頭を軽く叩いて「俺のは伸び代があるって意味でひよっこなんだよ」と丁寧に苗字名前を称する『ひよっこ』の由来を教えてやると隠岐は不満気な表情を浮かべて、面白くねえなあという顔をするものだから、こちとら面白さなんざ求めてねーんだよ、と反論してやりたくなる。
なんて沸々と湧き上がる怒りを何とか堪えていると苗字と佐鳥が俺の視界に飛び込んできたうえに目をキラキラと輝かせてなんだかよく分からないが無駄に大きく手を動かして何かを伝えようとしてくる。なんだこいつ。しかもソレを見た隠岐は またもイケメン(仮)らしからぬ表情を浮かべて、顔面を破綻させている。全くカオスな空間である。
「当真せんぱ〜い!!!」
「おー、どうした」
「ご飯食べに行きましょう!! 今日は、なんと!! 日替わりランチにデザートが付いてるんだってー! 私、デザート食べたい!」
「売り切れたんじゃねーの」
「まだお昼前だし、平気だもん!」
「へいへい、じゃーな。隠岐」
「なんやろ。心の底からムカつくわ」
「言ってろ」
今日の食堂はやけに賑やかである。わざわざ赴いた価値があったのか否かはまた別の話なのだろうが今回に限っていえば、苗字のいうランチプレートのデザートとやらは、まあそこそこ人気なのだろう。日替わりランチなんて普段は誰も食べやしねえのに今日に限ってはその列に人は群がる群がる。人がゴミのようだなんだと何処かで聞いたことがあるようなないような気がするけれど、まさにこのような状態のことをいうのであろう。これは凄まじい。普段弁当勢をやっている奴らが日替わりランチに群がっているという感じだ。因みにAランチも安定の人気を誇っているようで、そっちにも列は出来ている。
「あら、名前?」
「あ、加古さんと双葉ちゃんだ!! おふたりも日替わりランチですか!? 今日のデザートは ふわっふわのプチパンケーキなんですよ!」
「そうなの? 私達今日は別のメニューにする予定だったのだけれど、名前がそこまでいうのなら食べてみようかしら。双葉、貴方は?」
「名前先輩が勧めるなら、あたしも」
「是非是非!! 佐鳥ちゃん、苗字達も食券買いに行こう? 売り切れちゃうし!」
「うん!!」
「先輩の俺の事は置いてくのかよ。つか、あのバカが相変わらず すいません、加古さん」
「気にしないで頂戴。名前は私の妹で双葉のお姉さんみたいなものだもの」
「そんなんじゃありません」
「あら、今のは貴方達が仲良しだっていう意味だったのだけれど違ったかしら」
「……違いません」
あの加古隊のなにかと扱いが難しいと言われている黒江双葉にここまで言わせるのだから苗字のコミュニケーション能力は計り知れない。まあコミュニケーション能力云々でいえば、苗字の前ではアホみたいにポンコツで更には滅茶苦茶空回りをする犬飼澄晴とかいう男も中々のコミュニケーション能力を持っている。苗字の前では表情を消し、いつも聞いていることいないことをペラペラと話すために開かれている その口は見事に閉ざされるが。そしてその普通ではない様子の犬飼を初めてみた時。カゲは絶句していた。更に、苗字への態度を見て 犬飼を今まで以上に嫌いになったらしい。
まあ気持ちはわかる。犬飼の苗字への態度は割と酷い。まあ感情が読み取れるカゲからしてみれば、まさに意味不明な態度でしかないだろう。そういえば今となっては聞くタイミングも逃してしまったが、カゲは苗字に対する犬飼の態度を嫌ったのだろうか。それとも犬飼の その感情が気に食わなかったのだろうか。
「当真先輩、食券です!! お金は冬島隊長に言って給料から引いておくので!」
「敢えて自己申告すんな、うぜーから」
「しないとしないで怒るじゃん」
「俺の金の管理までやりだしたら、もういつでも当真家に嫁げるな。良かったなー」
「なんですか、その最悪な未来。私は将来は嵐山さんの家に嫁ぐので間に合ってます」
「月とスッポンだな」
「あってるけど失礼すぎませんか!!? 佐鳥ちゃん!! なんとか言って!!!」
「当真先輩って本当に苗字揶揄うの好きですよねー。とりまるを思い出します」
「フォローは!!?」
食券購入後、苗字と佐鳥が席取りで俺が列に並んで待つという役割を任された。この先輩にやらせるとは思えない役割を文句も言わずにこなしてやっていると、後ろから またガヤガヤと騒がしいのがやってきた。この時間は賑わう時間ーーーというか 普通に昼で まあ言わなくてもわかるだろうが、苗字達が席をさがし歩く程度には人で賑わう時間帯なので それもまあ仕方ない。
基本的に、休日のこの時間にいるのは馬鹿真面目な奴か任務がどっかしらの時間にある奴もしくは これから遊びに行くけどボーダー飯やすいし買ってこうぜ勢である。因みに休日なのに、苗字がいる理由としては、佐鳥が呼び出したからである。わかっているとは思うが、あの女は俺が呼び出しても普通に無視を決め込む。大した用事ではないのならば、隊の連絡も既読をつけない時があるので暗黙の了解としては緊急連絡は電話でという運びになっている。全面的に苗字名前のせいである。
「当真先輩、窓際の滅茶苦茶いい席とれました!!! 聞いてください! なんと、C級の方が譲ってくれました!!」
「おー、よかったなー」
「あ、ワゴンカート持ってきます!!」
回転の早い日替わりランチの列は もう間もなく俺達の食券が受け取ってもらえるところまで来ていた。佐鳥の奴は本当に席取りとして席で待機しているのだろうが、苗字は そのパンケーキにハチミツをかけたいとかで態々俺のところまで来たらしい。それはもう物凄く語られた。ワゴンカートを持って来てから食券を受け取ってもらうまで滅茶苦茶パンケーキの良さについて語る苗字名前の図といえば、この列に並ぶ大多数の注目を集めていた。
苗字といえば、ランク戦観戦には顔を出さない。表立った所には滅多な事現れないーーーという、こうみえて割とレアな隊員である。だからなのか、なぜか噂が一人歩きをして、苗字が滅茶苦茶お淑やかとか そんな噂もあるらしい。気持ちはわかる。俺も初めて見た時は静かで真面目な女を想像した。まあ見事に裏切られたわけだが。そんな裏切られた俺と同じように、ここに並ぶ奴等も苗字という女に裏切られたに違いないとあたりを盗み見るーーーが、どうやらそんなことはないらしい。周りの奴らは コッチが吃驚するくらい優しい表情を浮かべていた。世の中、この女に甘すぎると思う。
「日替わりランチ3つで、パンケーキは1個蜂蜜とバターで……当真先輩は?」
「いらねーよ、甘いだけだろ」
「2つはバターだけでお願いします!」
食堂のおばちゃん達は苗字をみるなり「(……バターの子だわ)」とでもいうかのような目をして、目を輝かせる苗字になにやら色々話しかけていた。その質問に愛想よく答えるコイツもコイツだが。因みに、出て来たパンケーキは明らかに苗字を贔屓したのではないかと口から出てしまいそうなほど手の込んだ仕上がりになっていた。
前に太刀川さんあたりが、「嵐山の時だけ無駄に海鮮丼が美味しそうに見える。あれは間違いなく贔屓されている」と忍田本部長に物申していた事があったけれど、今なら納得できる。間違いなく、あの人達には贔屓する奴がいる、と。俺も抗議しに行きたくなった。食堂のおばさんもイケメンと美少女には甘々なのだろう。世の中平等じゃない。
「佐鳥ちゃん、お待たせ〜」
「エッ!!!? うわ、なんか苗字のすごい美味しそう!!? なんで!?」
「いやいや、私よりも とりおが来た時のが凄かったよ。私本当びっくりしたもん。あと、じゅんじゅんも凄い……」
「あ、それわかる……」
「苗字も好かれる努力したもん……ラーメンのバターを無料で大盛りにして欲しくて…」
「ただのクズじゃねーか」
「事実だけど、黙って本当に」
苗字のクソ女っぷりが判明したところで昼飯をしっかりと完食した佐鳥が嵐山さんに声を掛けられて、そのまま仕事へと向かっていった。その時の苗字といえば、目をハートにして、らしくもないピンク色のオーラを滅茶苦茶解りやすく放出していた。嵐山さんが好きなのはしっていたけれど、もしかしたら結構ガチな好きなのかもしれない。詳しくは勿論わからない。コイツに聞いたところで、冗談のように交わされるか、もしくは、ノリに乗っかったようなリアクションを見せてくるだけである。それを理解した上で態々聞くような内容でもないのは、勿論理解してくれるだろう。なので解っているだろうが、詳しくは聞かなかった。
「なんでだろう。佐鳥ちゃんいなくなった瞬間に苗字は何で此処にいるんだろうって物凄い思い始めちゃいました。しかも、なんか隣にいるの当真先輩だし」
「おいこら。どういう意味だ、こら」
「先輩ってば、こらこら言い過ぎ」
「俺が馬鹿みたいに聞こえんだろ」
「先輩、自分は頭いいとか思ってたの?」
「思ってねーけど、殴んぞ」
「嫌だなー、苗字ジョークですよ」
「それが本当なら、その顔やめろ」
俺じゃあなくても腹が立つ顔をした苗字は、そのムカつく表情をやめた後に、「そういえば当真先輩」と、俺の顔を見上げた。急に何事かと苗字に視線を向けると、苗字は目を細めて俺の顔を真剣に見つめる。コイツと俺はいつも割とふざけあっているので そんな真剣に顔を見つめ合う機会などない。まあ、いつもの様子を見ている奴なら解るだろう。苗字が俺に対して、こういう目を向けてきたのは冬島隊入隊当初だとか そのあたりまで遡る。
俺達(苗字と俺)は(真木ちゃんや冬島さんとは違い)、改めて自分達のランク戦データを見るなんて事は特にしない。その為に、ランク戦では凛々しい(そのせいで噂が一人歩きする程の)苗字の真面目な顔っていうのも噂でしか聞いた事はないのだけれど、なるほど、恐らく その噂の凛々しい表情というのは、こういう顔なのだろうと他人事のように思う。
「私、そういえば当真先輩の髪を下ろしているところ見た事ないなーって」
「は?」
「いやだから、リーゼント」
そんなツマラナイ疑問の為に、そんな真剣な顔すんのか、この女は。もっと深刻な話をされるのかと思って冷や冷やしたじゃねーか。深刻な話とは?と聞かれてしまうと、まあ確かにパッとした内容のものは出て来ないけれど、それにしたって この会話はマジでクソすぎる。
苗字に期待をした俺が悪かったのだろうか。もしかしたら そうなのかもわからない。よく考えてみれば、相手は苗字である。深刻な話が出て来るはずもない。しかも、この俺相手に。自分で言うのも微妙だけれど、苗字は そう言う深刻で真剣な話は絶対に俺には持ち込まない。本気で困った時だって、頼るのは大人組である。そりゃあそうだ。頼り甲斐がある。特に苗字は、あの二宮さんと親しいらしいから仕方がないといえば仕方がないわけなのだけれど、間違いなく俺にも問題があるのだろう。俺だって、改めないだけで自覚はある。
「今更、髪下ろしたの見たところでネタにするだけじゃねーか、ホントクソだな」
「なんでまだ何もしていないのに自信満々に私という人間をディスるんですか」
「何言ってんだ。逆にすげーだろ、こんなにお前を理解してんだぞ、おれは」
「本当すげーよ、本人に言えるのが」
「それにそんな事 言い出したら、俺だって お前が眼鏡かけてるところ見たことねーぞ」
「……どこ情報ですか、それ」
「お前が一番分かってんだろ」
「出水ですね、後で蹴りにいきます」
「おうおう、そーしろ」
情報提供者である出水は 俺にこの情報を与えた際に「苗字ってメガネかけると結構美人なんすねー」と、いつもの調子で言っていたから似合わないという事はないのだろう。まあ俺も話のネタに するけどな。主に犬飼相手に。アイツに苗字の話をするのは本当に面白い。面白いというかーーー……いや、面白い。犬飼の良く回る口を閉ざしたい時なんかには苗字の話は効果覿面である。故に、多分俺以外にも犬飼に面倒事押し付けたい奴とかは苗字のネタを振っているのではないかと思う。
国近なんかは素で犬飼と苗字の良さみたいなものについて語り合っているけれど、荒船なんかはアレだ。カゲん家の常連だから苗字とは それなりに遭遇するようで(話すようになったのと、お互いを認識し始めたのは最近らしい)、犬飼が面倒になった時は苗字の写真を見せて黙らせた後に何の余韻がわからない余韻に浸っている犬飼の側から静かに立ち去ると本人が言っていた。逆に何があって苗字は犬飼みたいなタイプの奴を此処まで骨抜きにしたのだろうか。最早、なによりも疑問である。まあ滅茶苦茶すれ違っているのを見る限り、苗字には全く自覚がないが(だから余計に面白い)。
「でもまあ、似合ってたっつってたぞ」
「眼鏡の事? そんなのお世辞ですよ。ほら、当真先輩って一応私の上司的なアレ立場だし、会話振るなら褒めとくか、みたいな」
「いや普通に似合うだろ、お前なら」
「……え? いや、またまたあ〜。当真先輩ってば、すぐ そうやって私の事を揶揄うんだから! 知ってますよ。アレですよね! チンパンジーの延長の割には可愛いって意味ですよね! 酷い!!」
「相変わらず マイナス思考加速させてんのな。人が折角素直に褒めてやってんのに」
「急に褒める、とか……」
やめてください、と両手で顔を覆った苗字が空気に紛れて消えそうな か細い声でボソリと呟いた言葉は運が良いのか、悪いのか、しっかりと俺の耳に届き、俺と苗字との間には妙な間が生まれたーーーかと思えば、程なくして苗字はガタンと席を立ち上がって「そういえば 私、用事があるんでした!!!」と勢いよく走り出した。髪の間から少しだけ見えた苗字の耳は、もういっそ可哀想になる程に赤に色を変えてしまっていた。多分、俺も人のことは言えないだろう。俺達は2人して、その妙な空気の間、互いの顔面を一度たりとも見る事はしなかった。だから知らないのだ。苗字がその時にどんな顔をしていたのか、そして自分がどんな顔をしてしまっていたのかを。
気を確かに持つのだ、当真勇。どこぞの可愛い美少女でもなく、まして嵐山隊の綾辻のような超絶美少女でもない(国近や犬飼は綾辻より苗字と言っているから、もう あのレベルの顔面になると好みの差なのかも分からない)。気を確かに持て。そもそも、俺の どうでもいいような たった一言に、あんな過剰に良い反応を見せる苗字が悪い。なんだあの顔。あんな顔、嵐山さんの話する時にだって見せねー癖に。あー、くそ、あのクソ女。ああやって犬飼の奴も落としたのだろう。末恐ろしい。
苗字名前が冬島隊じゃなかったらどうする?
ふと、今朝 話していた会話を思い出した。苗字名前が冬島隊ではなかったら、だっただろうか。そうしたら、俺が苗字と こんな関係になる事はなかったのだろう。もしかしたら、苗字自身も今のような性格ではなかったかも分からない。少なくとも、佐鳥が語る程度の内容しか知らないとは言え、苗字は(佐鳥とも当時は仲良くなかったからかも分からないが)当時は物静かな女だったらしいのだ。今となっては想像も付かないが。
まあ、こんなタラレバの話はどうだっていい。今、苗字は俺達冬島隊なのだ。これは変わることのない現実である。本人には絶対に言ってやらないが、実力だって狙撃手の中でも五本指には確実に入る。狙撃手としての腕も確かだけれど、確かに その点で苗字は俺や奈良坂、佐鳥に劣るだろう。しかし、実戦ではどうか。あの女はお世辞でもなんでもなく、冬島隊エースである。それは俺が勝手に呼んでいるのではなくて、呼び始めたのは、俺達以外の誰かである。つまりそれは、冬島隊以外の奴らでさえも、アレをエースとして認めているということーーーつまり、それだけの実力を備えているという事だ。本来ならば狙撃手というのはエースには成り得ない。いや、まあウチのような特殊な部隊では成り得てしまうのだが、まあ狙撃手とはエースとは到底呼ばれないだろう役割だ。奈良坂でさえも、エースとは呼ばれないのだから その辺は理解してもらえるだろう。苗字は後方支援が主。エースが仕留め損ねた戦闘員を仕留めると言うわけでもなく、ただ後方支援をやり抜く。それだけだ。ただ それだけの筈なのに、何故エースと呼ばれるのか。それは出水のように味方に点を取らせるのが上手いからというのともう一つ。『目が良い』からだ。まあ この話は苗字は冬島隊以外にあり得ないという結論で一度終わりにしよう。そんな事よりも、だ。
「……誰だよ、アイツの事パッとしない女とか言った奴、普通に可愛いじゃねーか」
[Espoir]