紅は祈る



 ※刀剣破壊

 青くさい草の香と、湿った土の匂いにむせ返った。同時に、口から赤い霰のような血が零れ、装束のなけなしの白い部分を染め上げていく。赤は戦でつくといったが――、全く、これでは鶴に見えやしない。苦笑して、仰向けに倒れ込んだ。
 青空はひどく滲んでいた。最早、主のもとには帰れまい。そう確信して、途端、泣きたくなった。
 ――俺はきみに、さよならさえも告げられない。
 彼女の元に戻るのは、ただの鉄の塊だ。あるべき姿に戻っただけといえばそうではある、が。
 ……泣くだろうか、俺を想って。ああ、きっと泣く。
 走馬灯のように浮かぶ彼女と過ごした日々を思い返しながら、心の中で何度も何度も念じる。どうか泣いてくれるな、悲しんでくれるな、自分を責めてくれるな。俺がいなくても、きみには皆がいるだろう。だからこれからも、美味しいものを食べて、移りゆく季節にはしゃいで、笑って、元気に健やかに――。ああ、でも。
「……なあ、きみ。いつかきみの隣に、再びが立つことがあっても。そののことは、どうか、愛してくれるなよ」


2016



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