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 日本殺し屋連盟、通称殺連。その直属の特務部隊であるORDERオーダーが情報伝達時にしばしば利用する料理店には、南雲よりも先に一人の人物が到着していた。金色の長髪と顎の傷が特徴的な男は、神々廻という。南雲の二つ年下の後輩。

「あれ、神々廻。早いね〜?」
「仕事終わってそのまま来たんや。どっか寄るには微妙な時間やったしな」

 相変わらず間伸びした声で呼びかける南雲に、神々廻は冷たく返した。その態度を気にすることもなく、南雲は「そっか〜」と穏やかに席に着く。
 その彼をちらりと見て、神々廻は「クラブ壊滅してもうたらしいやん」と呟いた。

「あれ、知ってたんだ。そうなんだよ〜。あそこのオーナーと繋がり持って、例の標的ターゲットの居場所探るつもりだったんだけどね〜」

 長い脚を組んで、テーブルに肘をついて。絵画のモデルのような雰囲気で、南雲は溜息をついた。
 彼に与えられた任務は、現在裏社会で幅を利かせるとある組織の壊滅。それだけなら普段と変わらない簡単な任務だったけれど、そのトップはかなり隠れるのが上手いらしく――。現在得ている情報は、腕に薔薇のタトゥーがある娘らしき女と映る一枚の写真と、各地にクラブやバーに模して『薬』を作っている場所がある、ということだけ。その薬の製造場所として候補が上がった内のひとつが、先日南雲が名前を連れて潜入したクラブだった。調査の結果、ターゲットが運営するクラブの一つであることは分かったが。

「でもあの感じだと、直接は上の人に会えてないかもな〜。ハリボテのトップな気がする」

 女の手により絶命した支配人の姿を思い出しながら零した南雲に、神々廻は薄く目を見開いた。そして、「クラブ行っとったん」と、疑問を口にする。相手の女がいなければ中にまで入ることができないことは、神々廻も承知していた。「誰と?」と続けた神々廻に、南雲は名前のことを思い浮かべるも、

「……秘密」

 とはぐらかした。

「何やそれ」

 肩を竦め呆れる神々廻に、南雲が「まぁ、暫くは様子見かな〜」と、この話はおしまいと言わんばかりに言った時、扉が開き他のメンバーも集まってきた。南雲と神々廻の雑談は自然と切り上げられ、代わりに伝達係の男が話を始める――。



真昼は悪夢を隠してる(完)