05


 自宅に戻った南雲は、淹れたばかりのコーヒーを片手にノートパソコンを開けた。
 いくつかのプログラムを起動させ、イヤホンを繋げる。少しくぐもったテレビのニュースキャスターの声がした。それから、微かな生活音。

(……ちゃんとつけてくれるかなぁ。これで何か分かればいいけど)

 南雲の脳裏に浮かぶのは、名前に渡したイヤリング。あれはただのプレゼントなどではなくて、素人には絶対に分からない盗聴器とGPSが埋め込まれている。すべて、ターゲットの娘と思しき人物についての情報を得るためだ。良心は傷まなかった。傷むはずがない、と思った。元より、南雲は名前を利用するつもりだったのだ。まさかターゲットの娘と関係を持ってくれるなんて、こんなに役立つ女になるとは想像していなかった。
 けれど、ふとイヤリングを受け取った彼女の照れ臭そうな顔がよぎって、南雲はどきりとした。

(……馬鹿げてる)

 失笑する。任務より優先することなんて、ありはしない。
 薄暗い部屋の中、パソコンの明かりが南雲の顔をぼんやりと照らしていた。